動物園の動物は、どこから来て、どこへ行くのか。朝日新聞記者3人の共著『岐路に立つ「動物園大国」 動物たちにとっての「幸せ」とは?』(現代書館)より、一部を紹介する――。

※所属や肩書などは取材当時のものです。

単位が「1フラミンゴ」「1シマウマ」

動物園による動物の移動の実態はどのようなものなのか。

その全体像を明らかにするため、朝日新聞は全国の76自治体(84園)に、動物の搬出・搬入に関する文書の情報開示請求を行った。

余った動物を差し出し、新たな動物を入手する「動物交換」。

朝日新聞が入手した開示文書を集計すると、動物園から搬出された動物の34%にあたる1699頭が交換によるものだった。

こうした取引では、動物が「通貨」の単位のように使われている。

レップジャパンの白輪剛史さんは「動物を手に入れるための通貨単位が『1フラミンゴ』『1シマウマ』のような世界になっている」と明かす。

シマウマ
写真=iStock.com/Angelika
単位が「1フラミンゴ」「1シマウマ」のような世界に(※写真はイメージです)

「持ちネタのある動物園」は強い

たとえば、豊橋総合動植物公園(愛知県豊橋市)が17年に交わした契約では、レップジャパンが輸入した1頭のミナミシロサイを、20羽のジェンツーペンギンと交換で入手した――といった具合だ。

動物交換の「持ちネタ」がある動物園は少なくない。

たとえば、熊本市動植物園においてはシロクジャクがそうだ。

シロクジャクはインドクジャクが遺伝子変異で白くなったもので、人気が高い。

熊本市動植物園では安定的に繁殖できていて、動物交換でよく使っているという。

戸澤角充かくみつ園長は「ほしい動物がいる時に、出せる動物がいるというのは動物園としての強みになっている」と話す。