水族館に「アシカのオス」はいらない
ちなみにウェイティングリストができるアシカは、メスに限る。
なぜなら、体が大きいオスはショーに使うには危険で、水族館側がオスは望まないためだ。
だからオスは余剰になりやすい。
アシカはハーレムを作る動物で、オス1頭につき、メスは複数いても困らない。
だが、オス同士を同じスペースに置くとケンカを始める。その習性も、ネックになっている。
「メスはすぐに出せる。でもオスはなかなか難しい。3歳になるくらいまでには出さないといけないのだが」と、19年夏にオス1頭、メス1頭の繁殖に成功した天王寺動物園(大阪市)の担当者は話した。
動物購入予算は「50万円あればいいほう」
動物交換が行われる背景には、公立動物園が抱える「財政難」という事情もある。
公立動物園の多くは、入園料やグッズの売り上げだけでは運営費をまかなえない。
自治体の財政も余裕があるところは少ない。動物購入のための予算は、政令指定都市の動物園でも年50万円あればいいほうだ。
「20年以上前から動物の購入予算がついていない。ほしい動物がいる場合、交換に頼らざるを得ない」と話すのは、平川動物公園(鹿児島市)の桜井普子・飼育展示課長だ。
平川動物公園では2016年春、コツメカワウソ2頭が余剰になっていた。
毎年2、3頭生まれるが、園内で両親やきょうだいと一緒に飼育し続けると、近親交配や闘争のリスクが出てくる。
その一方、カピバラとベネットアカクビワラビーを新たに入手したいと考えていた。
「繁殖を考えていたが、ほかの動物園で出してくれるところがなかった」(桜井さん)