数十万するゼニアのスーツを買い漁っていた

私は若い頃からおしゃれが好きなこともあり、服にはわりとお金をかけるほうだと思っています。

40代の始め頃の私は、『大人のための勉強法』(PHP新書)という本がベストセラーになって、さらに自営の通信教育の売り上げもよく、わりと懐具合がよい時期でした。

もっとも、今は少子化で受験産業が低迷しているので、たまたまその当時がよかったという意味です。大学病院などに所属していない私は、基本的に収入は安定していません。

いずれにしても、私の場合、「お金があれば服を買いたい」という性格なので、その頃はスーツをはじめ、服装にはけっこうお金をかけていたのです。

エルメネジルド・ゼニア(以下、ゼニア)というブランドが好きだったので、数十万するゼニアのスーツも、あまり躊躇せずに買っていました。

それから私は太ってしまい、ゼニアのそのスーツが着られなくなってしまいましたが、もったいないので捨てないでとっておいていたのです。

とっておいたとしても、さすがにそのスーツは、もう二度と着られないだろうと思っていました。

ところが日大常務理事の就任が決まってから、また袖を通してみたところ、サイズがピッタリだったのです。

腕時計を確認するスーツの男性
写真=iStock.com/BONDART
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60歳を過ぎたら、自分が生きたいように生きるのが一番

私は自分が糖尿病であることを公言していますが、糖尿病の症状の1つに「やせる」があります。エネルギーとして使われる血糖が尿から排出されるため、やせてくるのです。

その結果、昔のスーツが着られるようになったというわけです。

一般に糖尿病でやせるのは危険だとされていますが、体調はむしろよいくらいです。

仮に危険だとしても、私の場合は、「見た目がよくなるならいいじゃない」という考えなので、そんなに深刻に受けて止めていません。

これまでの本でも述べていますが、60歳を過ぎたら、自分が生きたいように生きるのが一番です。

糖尿病でも長生きするために、血糖コントロールを一生続けて、85歳まで生きられたとしましょう。でもそのために、食べたいものをがまんしたり、インスリン注射を打ちながら生きるという自分の姿は想像できません。

確かに、私はそんなに長くは生きられないかもしれません。でも好きなように生きて、85歳よりも5年、10年寿命が短くなったとしても、死ぬ間際までかっこいい爺さんとして死んでいったほうがよいと思っています。

話をおしゃれに戻すと、理事の仕事で日大に行くときは、よくこのゼニアのスーツを着て行きます。仕立てのよいスーツですから、今着てもぜんぜん古くは見えません。

数十万円したスーツですが、20年たっても着られるのですから、おしゃれが好きな人なら、そんなにべらぼうに高い値段とは言えないのではないでしょうか。