雑草生態学を専門とする、静岡大学農学部教授の稲垣栄洋さんは「『雑草は踏まれても踏まれても立ち上がる』といわれるが、実際は踏まれたら立ち上がらない。踏まれながらタネを残す方にエネルギーを使う」という――。(第2回/全3回)

※本稿は、稲垣栄洋『雑草学研究室の踏まれたら立ち上がらない面々』(小学館)の一部を再編集したものです。

雨に濡れている四つ葉のクローバー
写真=iStock.com/imacoconut
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四つ葉のクローバーを見つけるコツ

幸せのシンボルである四つ葉のクローバー(シロツメクサの葉っぱ)を見つけるにはコツがある。

じつは四つ葉のクローバーは踏まれやすいところに多い傾向にあるのだ。

四つ葉が生じる原因はいくつかあるが、そのうちのひとつは葉の基になる葉原基ようげんきと呼ばれる部分が傷つくことにある。踏まれると葉原基が傷ついて、三つ葉になるはずが四つ葉になってしまうのだ。

図鑑には、よくそう説明されている。

しかし、四つ葉のクローバーが踏まれやすいところに多いって、本当なんだろうか?

それが鳥海とりうみさんの研究テーマである。

鳥海さんは、心の病気で学校を休んでいた学生である。

そんな鳥海さんが、私の研究室に見学にやってきた。どうやら、私の研究室への分属を考えているらしい。

私の研究室は広々とした農場にあるから、学生と話をするときに、あえて部屋の中で行う必要はない。学生と肩を並べながら、のんびり農場の中を歩いた方が、面と向かって話すよりも話しやすい。おそらく学生も同じだろう。

幸せに巡り合う名人

ひととおり、研究室の説明をした後、畑の土手に座って休んでいると、鳥海さんが何かを見つけたようだ。

「四つ葉のクローバーがあります」
「えっ、どこどこ?」
「ほら、あそこにあります」

鳥海さんの指さすところを見ても、全然わからない。

「えっ、見つからないけど、どこにある?」

そうこうしているうちに、鳥海さんが言った。

「あっ、あそこにもあります」
「えっ、どこにある?」
「あそこにもありました」

私がまごまごしているうちに、鳥海さんは、いくつも四つ葉のクローバーを見つけていった。

「鳥海さんは、幸せを見つけるのが得意だねぇ」

四つ葉のクローバーは、幸せのシンボルとして知られている。

聞けば鳥海さんは、四つ葉のクローバーを見つけるのが得意らしい。

何でも、たくさんある三つ葉の中で、四つ葉が光って見えるらしい。

どうにも信じがたいが、事実、その後も鳥海さんは歩きながら次々と四つ葉のクローバーを見つけていった。幸せに巡り合う名人というのは、本当にいるものなのだ。