歌舞伎町の路上で売春をする女性の多くは、同じ歌舞伎町にあるホストクラブに通っている。毎日新聞社会部の春増翔太記者は「売春で逮捕された女性の7~8割がホストに貢ぐためにお金を稼いでいたと話す捜査員もいる。2018年10月には女性の飛び降り事件が多発し、その背景を探ったのが歌舞伎町での最初の取材だった」という――。

※本稿は、春増翔太『ルポ 歌舞伎町の路上売春』(ちくま新書)の一部を再編集したものです。記事に登場するカタカナ表記の名前は仮名です。

東京・新宿区歌舞伎町のネオンライト看板
写真=iStock.com/fotoVoyager
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ホストに貢ぐお金を稼ぐために体を売る女性が多い

歌舞伎町に立つ女の子たちの取材を始めて数カ月で、目の当たりにしたことがある。ホストクラブへ行くために売春をする子が少なくない、という現実だ。少なくないどころか、その多さに驚いた。

「少なくない」と書いたが、路上売春をする女性のうち何割がホストクラブに行くのか、実態はよく分からない。

警視庁保安課の幹部は、「最近1年間で逮捕した女性の中には、生活が苦しくてという人もいたが、ほとんどがホストクラブで遊ぶ金欲しさ、もしくは売掛金を返すためだった」と話す。2022年までの5年間に大久保公園周辺で逮捕した売春女性は201人。その7〜8割がホストにみつぐためだったと話す捜査員もいる。

日本一のホストクラブ街である歌舞伎町で何が起こっているのか

歌舞伎町は、日本一のホストクラブ街でもある。1990年代半ばまでは30軒ほどだったのが90年代後半に急増し、現在では200軒以上のホストクラブがある。ホストとして働く男性は、数千人に上ると言われている。

着飾った若い男性が、女性客に酒を提供し、会話を盛り上げて楽しませる。女性は、最初の来店時こそ「初回」といって、1〜2時間を無料や数千円で遊ぶことができる。初回は無料どころか、数千円を客に還元する店もある。

初回であっても、制限時間後に延長する「飲み直し」をした場合は、特定のホストを指名することになっていて、料金は万単位となる。2回目以降も同様だ。指名されたホストは「担当」と呼ばれ、指名料や客が注文したボトルの料金は、担当の売り上げとしてカウントされる。

人気ホストは、まるでアイドルだ。1カ月の売り上げが1000万円を超えるようになると、大きく引き伸ばした顔写真がビルの外壁や広告看板に載り、その世界の憧れの的となる。テレビや雑誌にも出演するような超人気ホストは、ごく一握りの存在だ。きらびやかな夜の世界の象徴でもある。