2018年10月だけで数人の女性が歌舞伎町のビルから……

私が初めて歌舞伎町の取材をしたのは2018年だった。それは、ホストに関係する話だった。

10月2日午後7時ごろ、東京都新宿区歌舞伎町2の雑居ビルから飛び降りた女性が、道路を歩いていた20代の男性にぶつかった。2人とも病院に搬送され、女性は死亡、男性は命に別条はないとみられる。
警視庁新宿署によると、女性は20歳くらい。雑居ビルの8階部分の外階段には女性の靴が残されていた。目撃証言などから、同署は女性が自殺を図ったとみて調べている。
現場は飲食店や風俗店が建ち並ぶ繁華街の一角。
飲食店従業員の女性(21)は「男性は受け答えができていたが、頭から血が流れていた」と驚いた様子で話した。(2018年10月3日付「毎日新聞」朝刊)

「飛び降りたのは、ホストとトラブルになった女性たちでは」

歌舞伎町で飛び降りや未遂騒ぎが頻発したこのときも、記事になったのは、男性にぶつかった女性の事件だけだった。それぞれの飛び降り騒ぎに関連はなさそうだったが、あまりにも続くのが気になった。

「これ、調べてみたらいいかもしれないですね」

同僚や上司と話をすると、すぐにある仮説が浮かんだ。「飛び降りたのは、ホストとトラブルになった女性たちではないか」。未遂騒ぎの中には、屋上で男女が激しく言い合った末に男性が女性を止めるという事案があったし、現場となった雑居ビルには何軒ものホストクラブが入っていた。

飛び降りて亡くなった女性を知る人を探そうと、私は同僚と夜の歌舞伎町に向かった。

この時点で分かっていたのは、女性の大まかな年齢と飛び降りた日時、場所だけだった。私たちは夜の街を歩き回り、誰彼となく話を聞いた。ほとんど足を踏み入れたことのない歌舞伎町2丁目は、不夜城だった。日付が変わると、一帯を歩く人の数が急に増える。終電に乗り遅れまいと急ぐ人かと思ったが、どうも違う。急いでいないのだ。どこか目的地があるらしい女性と、女性に声をかける男性が大半だ。しばらくして、女性たちは、店の営業が終わったホストクラブから出てきた客で、男性はキャッチかスカウトだと知った。

東京・新宿区歌舞伎町のゴジラロード
写真=iStock.com/Starcevic
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