オープンAIのお家騒動で揺れるAI業界

現在、世界中で注目を集め、急速に利用が増えている“チャットGPT”を開発した、米オープンAIの理事会で予想外の事態が発生した。同社の創業者の1人であるサム・アルトマン氏が解任された。その後、すぐにアルトマン氏は、オープンAIと資本関係にあるマイクロソフトに入社すると発表された。

解任決定にもかかわらず、同社の90%以上の従業員がアルトマン氏の復帰を願ったこともあり、同氏は電撃的に同社の最高経営責任者(CEO)に返り咲くことが発表された。アルトマン氏のような高い技術を持った経営者が、今後の世界のAIの発展に必要不可欠であるという認識が明確になった。

一方、AI利用増加に対応するため、主要半導体メーカーは積極的な生産施設の拡充を加速している。11月後半、世界最大の半導体ファウンドリである、台湾積体電路製造(TSMC)は熊本第3工場の建設を検討していると報じられた。

「投資規模は約3兆円」と指摘

ブルームバーグによると、TSMCは、第3工場で回路線幅3ナノメートル(ナノメートルは10億分の1メートル)のロジック半導体の製造を予定するようだ。投資規模は約2兆9000億円に達する可能性がある。

AI利用の急増は、わが国半導体産業の復活の機会につながることが期待できる。世界的に製造技術力が高い半導体製造装置、超高純度の半導体関連部材メーカーの収益機会は増えるだろう。将来的に1ナノのチップ製造を目指すラピダスをはじめ、半導体産業の成長期待も高まるはずだ。

政府はそうした変化を、わが国経済の本格的な回復につなげるべく政策運営を行う必要がある。民間企業のリスクテイクを支える産業政策強化の重要性は高まる。

10月、TSMCは熊本第2工場で、回路線幅6ナノメートルの先端半導体の生産を計画しているとの報道があった。それから約1カ月、今度は回路線幅3ナノメートル、現時点で最先端の半導体工場の建設も想定しているようだ。

世界的半導体メーカーの台湾積体電路製造(TSMC)の熊本工場
写真=時事通信フォト
世界的半導体メーカーの台湾積体電路製造(TSMC)の熊本工場(=熊本県菊池郡菊陽町)