「後工程」に日本企業の収益チャンスがある

前工程だけでなく、回路を形成したシリコンウエハーの研磨装置、封入に用いられる材料などの分野で、わが国の企業は世界的に高いシェアを確保している。関連企業との関係強化のため、TSMCは対日直接投資の積み増しを急いでいるとみられる。わが国の半導体関連企業の収益チャンスはかなり増えそうだ。

後工程の第1ステップでは、前工程で6ナノメートルや3ナノメートルの回路が形成されたシリコンウエハーを研磨し、加工しやすくする。この工程をグラインディングという。グラインディング処理を施したウエハーは、ダイジング工程に移る。ダイジング工程では、形成された集積回路をウエハーから切り出し、チップの形状にする。

切り出されたチップは、他の電子部品と結合する基盤(支持体などと呼ぶ)と固着される。この工程をダイボンディングと呼ぶ。基盤との固着後、チップに電極がつけられる。このままでは衝撃に弱いため、ケースに封入する(モールディング)。最終的にケースに封入されたチップは、所定の機能を正確に発揮するか、最終検査に回る。

生産中のシリコンウエハー
写真=iStock.com/SweetBunFactory
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日本政府は「半導体1.9兆円支援」を決定

一連の後工程で用いられる製造装置、各工程でチップなどを運搬する装置、研磨剤や切り出しに使われるパーツなどにおいて、わが国の企業は世界的に高い製造技術を持つ。米国、オランダ、シンガポールなどにも高い技術力を持つ企業はあるが、前工程、後工程の多くで用いられる装置、部材のサプライヤーが集積しているのは、わが国半導体産業界の特徴だ。

TSMCは、わが国の半導体関連企業との関係をより強固にし、前工程、後工程で可能な限りの需要を取り込む体制確立を急いでいる。同様の考えに基づき、台湾などの後工程専業企業の対日直接投資が増えることもあるだろう。

また、政府が半導体産業の支援策を強化したことも大きい。2023年度の補正予算案において政府は、半導体支援に1.9兆円を盛り込んだ。過去の教訓を活かし、国内企業に海外企業との連携を強化するよう支援も強化されている。それもTSMCの対日直接投資積み増しの支援材料と考えられる。