MBOの狙いは本格的な構造改革への着手
ベネッセの創業家が投資ファンドと組んで株式の公開買付(MBO)を発表しました。ベネッセの株価は2007年から2008年をピークに長期凋落の状況にありました。その構造改革に本格的に着手したいというのがMBOの狙いだと思われます。
ベネッセは外国人株主比率が約25%でそれほどは外部投資家の影響力は大きくない会社ですが、それでも四半期ごとに短期利益を追求する株主に対応していきながら構造改革をするのは骨が折れる仕事です。
今回のMBOで創業家が組むEQTグループというファンド会社はスウェーデンのプライベートエクイティで、DX化の支援に秀でています。それとともに「企業を将来にわたり持続的に価値がある企業へ変革する」というパーパスがベネッセ創業家のパーパスと合致していたことから、長期的な改革の目線が合うと考えたのでしょう。
さて、ベネッセの失敗は2014年の個人情報流出事件以降、会員数が減少していることが大きいと言われます。経営難の背景には、進研ゼミ事業の低迷が大きくあるのは間違いないのですが、経営難の原因はもう少し深い構造的なもののようです。
今回の記事では公開データをもとに「ベネッセの失敗」について考えてみたいと思います。
今でも売上を支えているのは国内教育事業
11月10日に発表された最新の2023年度第2四半期の決算報告では、業績ハイライトとして「介護・保育事業がけん引し、増収増益」とあります。事業別の売上高を見ると介護・保育事業のほかに大学・社会人事業も増収で、これらの事業が国内教育事業の減収減益を補っているとまっさきに報告されています。
ベネッセの事業構造は進研ゼミなどの国内教育事業が売上全体のほぼ半分、介護・保育事業がほぼ3分の1で、大学・社会人事業が約5%、残りが海外などその他の事業です。業績ハイライトでは介護事業が今後の柱、社会人事業が期待の次世代事業ととられかねない発表になっています。
新規事業として始まった介護・保育事業が大きな事業の柱に育ってきたのは好ましいことですが、それと対比して長期凋落しているとはいえ、今でも売上の半分、営業利益の8割以上を稼ぎ出しているのはあくまで国内教育事業です。構造改革の計画でもこの事業の立て直しが主に語られているわけですが、いったい何が起きているのでしょうか?