官僚システムを壊した「楽しい日本」を目指す

大量消費社会の完成形とその先にある未来を1970年の大阪万博は象徴していたというわけだ。

では、2025年に誘致を狙った万博はどうなのか。大阪・関西万博についても記事の中で述べている。ちなみに堺屋は万博終了後に会場である夢洲にIR(統合型リゾート)を誘致し、万博のレガシーとすることを掲げていた。

「特に情報発信機能を創ることです。マスコミはカジノ中毒ばかり心配していますが、IRではショービジネスの拠点となる劇場や国際会議場・展示施設、ホテルや商業施設などが80%以上と決まっています。国内外からの観光客を呼び込め、高い経済効果と文化創造効果が見込まれるとともに、高度のプロデュースと演出力を育てられます。もともと文化創造が得意な大阪こそIRを積極的に主導すべきです」

そのうえで「楽しい日本」を創造することこそ、日本が再成長する道だとしているのだ。

堺屋氏の逝去に当たって『日経ビジネス』が再掲した記事には、その「楽しい日本」の意味がより具体的に語られている。

記事の中で堺屋氏は、日本が目指すべきは「3度目の日本」だと語っている。軍人と官僚が専制した「明治日本」が「1度目の日本」。「2度目の日本」は「戦後日本」で、規格大量生産で、官僚主導の日本だった。そして次に日本がやらなければならないのは、この官僚システムを壊すことだと語っている。

「官僚制度ではなしに、本当の主権在民を実現する『楽しい日本』です」

万博公園の桜まつり・太陽の塔の後ろ姿
写真=iStock.com/EarthScapeImageGraphy
※写真はイメージです

「大阪の誇りを取り戻すことは、日本にとって有益になる」

堺屋氏は自らも官僚として社会人をスタートしたにもかかわらず、官僚制度を強烈に批判していた。筆者も何度も直接話を伺ったが、それは首尾一貫していた。その背景には、大きな歴史的な枠組みの変化があるという強い信念があったように思う。「2度目の日本」は官僚主導体制で成功を収めたが、それが限界に来たのがバブルの形成と崩壊。次の時代の「3度目の日本」に官僚制度は邪魔だというわけだ。

だからこそ、堺屋氏は大阪にこだわったのだ。

婦人画報の原稿の後半にはこうある。

「東京と違い、大阪は官僚統制を受けてきませんでした。民によって街づくりがなされ、民の文化を醸成してきたのです。万博構想のある2025年を契機に、大阪という都市を日本だけでなく世界でどう位置付けるか。自主独立の文化をもう一度生み出し、大阪の誇りを取り戻すことは、日本にとって有益になる。今こそ発想を大転換し、再び日本の中心たる大阪を目指そうではありませんか」

万博は大阪が自主独立することで「3度目の日本」の扉を開く契機になるということだろう。