1970年の万博には、小学校を休んで東京から出かけた

1970年に小学生だった筆者は学校を休んで平日に父親と大阪・吹田の万博に東京から出かけた。小学校の担任も、それは良い経験になると賛成してくれた。日本全体がそんな雰囲気だった。だから、国民の6割に相当する6422万人もの入場者を集めたのだろう。会場は未来を予感させる別世界に感じられ、企業のパビリオンの展示に目を輝かせた。そこに「夢」や日本企業の未来を感じたものだ。

今、四半世紀続いたデフレと低成長の影響もあって、社会が「夢」や「未来」を思い描けなくなっている。それを可視化する場が万博だと考えれば、堺屋氏の思いが見えてくる。

日本財団がこのほど17歳から19歳の男女1000人に行った意識調査によると、大阪・関西万博について68.1%が「賛成」と答え、「反対」は6.6%にとどまったという。若者が万博開催に好意的なのは、日本社会をあげた大きなイベントがほとんどなかったこともあるだろう。東京オリンピック・パラリンピックも結局、無観客開催となり、国を挙げての祭典としては精彩を欠いた。

新国立競技場
写真=iStock.com/Ryosei Watanabe
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試されるのは「国」ではなく「民間」の底力だ

問題は大阪・関西万博が「夢」を描き、「未来」を示す祭典になれるかどうか。そのためには、「国」ではなく、民間の底力が試される。

パナソニックホールディングスはこのほど、万博の前売り券15万枚以上を購入する方針を打ち出した。すでに関西電力がグループで20万枚、JR西日本も20万枚を購入する方針を示している。関西財界を挙げて万博を成功させられるかが問われている。万博の華とも言える企業パビリオンで、いったいどんな夢や未来を示すことができるのか。そこで多くの若者や子どもたちが未来に夢を抱くことができれば、日本再生のエネルギーが生まれてくるに違いない。

一方、万が一にも中止や延期になれば、それは日本の没落を象徴することになってしまう。そんな屈辱を味わうわけにはいかない。

新型コロナが明けて、人の移動が大きく増えている。円安もあり、日本を訪れる訪日外国人も急増している。そうでなくても関西圏は外国人を引きつける魅力ある観光スポット、買い物スポットに恵まれている。万博を訪れる外国人に、日本企業の未来を示せるかどうかも、今後の日本経済の行方に大きな影響を与えるだろう。新しい日本企業の姿を感じさせることができれば、日本の未来への投資は増えるに違いないが、失望をさせてしまったら、金輪際日本に資金は集まらず経済は後退し続けることになるだろう。万博の成否は日本の未来を左右するターニングポイントになるに違いない。

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