まずは根拠のない自虐をやめること

同じことは、政界・官界や学界にもいえるかもしれない。岩田龍子『日本的経営の編成原理』(文眞堂)が指摘するように、濃密な人間関係に根差したチームワーク重視の組織運営という日本的経営の特徴は、そもそも日本の社会全体の特徴から生まれたものである可能性もあるためだ。

岩尾俊兵『日本企業はなぜ「強み」を捨てるのか』(光文社新書)
岩尾俊兵『日本企業はなぜ「強み」を捨てるのか』(光文社新書)

こうしたことを総合すれば、まずは日本式経営に対する根拠なき自虐をやめ、経営技術の逆輸入という状況を認識したら、次は日本の産官学はコンセプト化の組織能力が低かったことを反省し、それを克服する手段を講じるべきだろう。

そのためには、まずは日本の産官学におけるコミュニケーションは文脈依存度が高いことが多いと認める必要がある。その上で、今後は意識的に抽象度の高い議論や論理モデル作りをおこなうべきだ。そして、そのために人事評価や会議の運営方法など、組織ごとに工夫すべきことがあると考える。

このように、経営技術の逆輸入という状況は、意識一つで解消することができるのだ。その意味では、日本経済を取り巻くさまざまな問題の中では比較的取り組みやすいものであるといえるだろう。

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