日本の「観光のあり方」が問われている
世界遺産に登録された際、イコモスからは「サービス提供施設が、景観のいくつかの箇所を支配しているように見え、山の神聖さや美しさという特質を損なっている」、つまり、人工物が多すぎるという指摘も受けていた。そのため、LRT敷設に合わせた五合目の整備によって、自然の景観を取り戻そうという意図もあるという。
往復運賃が高額になることについても、五合目をより上質な空間として整備することで「過ごす時間が、お金のコストを上回るような満足度のある、唯一無二な体験ができる場所にする」と長崎知事は強調する。つまり、山梨県は富士山観光をこれまでの「量」から「質」へ変化させる取り組みだとしている。
いずれにせよ富士山における観光のあり方が大きく変わるのは確かだ。観光地のあり方の変革は、地元の自治体や企業の理解を得て進めていくことも必要不可欠となる。
長崎知事は「スバルラインも高度経済成長に入って、モータリゼーションが始まる時代を先取りする形で作られた。それから60年経って、次はサステナビリティ、SDGsの観点からルートのあり方もデザインし直す時に来ている。これからの100年に富士山をどう繋いでいくかという視点で、みんなで知恵を出し合うような議論をしていきたい」と話す。
「富士山登山鉄道構想」は本当に実現するのか。富士山の観光のあり方はどう変わっていくのか。その行方は、各地でオーバーツーリズムが問題になっている日本の観光の指標となるかもしれない。