「富士山を楽しむお客様を選別しかねない」
懸念は富士吉田市だけでなく、地元の観光関係者からも出ている。富士急行の社長で、富士五湖観光連盟の堀内光一郎会長は「1万円という高額な価格設定は、富士山を楽しむお客様を選別し、一定の『限られた豊かな方々のみが利用できる富士山』となりかねない」と主張している。一方、オーバーツーリズムの解消については「電気バスの技術革新により、環境面での登山鉄道導入の必要性がない」と富士吉田市と平仄を合わせる。
また、富士河口湖町観光連盟の山下茂代表理事は「まだ十分に説明を受けていないため賛否は示せない」としつつ、「オーバーツーリズムに対して交通手段を制限するなど物理的に観光客を減らすのではなく、周囲の他の観光地を周遊させて分散させるほか、観光客自身に環境問題に取り組んでもらうような創意工夫がもっと必要ではないか」と話している。
「特別な時間を体験できる場所にしたい」
このように、反対や懸念の声もあがっている「富士山登山鉄道構想」だが、それでも電気バスを拡充するのではなく、スバルラインにLRTを敷設する意義はあるのか。山梨県の長崎幸太郎知事は、富士山五合目について「特別な時間を体験できる場所にしたい」と語る。
現在の富士山五合目は売店やレストハウス、冨士山小御嶽神社などが並ぶ「少し豪華な道の駅」といった具合だが、LRT敷設に合わせて駅舎などを整備する。ショッピングモールやレストラン、宿泊施設を新しく整備し、「10分や1時間ではなくて、2、3時間ゆっくり食事をして、場合によっては1泊するような体験ができる場に変えていきたい」というのだ。
その際には、現在ある駐車場などを埋め戻して、半地下に駅舎や店舗を整備することで、外から見たら現在よりも自然豊かな外観にする予定だという。