地元・富士吉田市からは反対の声が…

この構想は「富士スバルライン」の有料道路としての運用を廃止し、LRT(次世代型路面電車システム)を道路の上に敷設するというものだ。LRTといえば、今年8月、コンパクトシティ実現のために宇都宮市で導入されたことでも話題となった。電気モーターで駆動するため二酸化炭素を排出せず、車やバスに比べて環境に優しい交通手段として注目されている。これを富士山に「登山鉄道」として導入することで、観光客の数をコントロールするとともに、環境負荷を低減しようというわけだ。

しかし、構想を巡っては地元から反対意見があがっている。スバルライン五合目の所在地である富士吉田市の堀内茂市長が「スバルラインを電気バスに限定すればこと足りる」と記者会見で主張したのだ。

実はスバルラインは繁忙期である7月中旬から9月中旬にかけて「マイカー規制」を行っており、期間中はシャトルバスが平日に26往復、土日祝に29往復して観光客の足を支えている。シャトルバスの多くは、二酸化炭素を排出しない電気バスだ。

富士スバルラインを走る「電気バス」
筆者撮影
富士スバルラインを走る「電気バス」

登山鉄道「往復運賃1万円」の衝撃

ただ、観光バスやタクシーは規制の対象外となっており、期間外であれば車で乗り入れることができるため、環境対策は完全ではない。そのため、スバルラインを完全に電気バス限定の道路として使用することで、新たな開発を行うことなく、LRTと同等の効果を得ようというのが富士吉田市の主張となっている。

この対立の背景には、観光客が支払う乗車賃が大きく変わることも指摘されている。山梨県は「富士山登山鉄道構想」について発表した資料において、LRTが敷設された際の収支を、往復運賃1万円として試算している。現在の電気バスの往復運賃が2800円(規制期間中のシャトルバスは2500円)であることを考えると、割高感は否めない。

富士吉田市の担当者も「電気バスの運行を充実させることで排ガスの問題はクリアできる。あえて今あるスバルラインを大規模に変えて鉄道を敷設する必要性が本当にあるのか」と疑問を呈する。