年齢を重ねると、料理をするのがおっくうになることはあります。レパートリーが減り、複雑なレシピが苦手になってくる。これはよくあることです。
しかし、パタリと料理をしなくなってしまったら、認知症グレーゾーンを疑う必要があります。その背景には、意欲と記憶の両方の低下が関係しています。
まず、食材を洗う、刻む、フライパンに油をひいて炒めるといった、基本的な動作はほぼできます。しかし、前頭葉の働きが悪くなり、判断力が低下するにつれ、調理の段取りが難しくなります。また、記憶力が低下し、料理の手順を記憶しておけなくなりますし、調味料を入れたかどうかも忘れます。さらに、味見をしても味がわかりません。
料理は最高の「脳活」になる
普段は何気なく行っている料理は、じつは脳がフル稼働していないとできないものなのです(本書123ページ参照)。そうなると、あれほど好きだった料理が楽しくなくなり、こんな料理を作りたい、家族に食べさせたいといった意欲もわいてきません。料理は最高の“脳活”ですから、さらに認知機能が低下していくという悪循環に陥ってしまうのです。
料理の味が大きく変わった。いつも手際よく調理していたのに最近もたついている。以前はほとんどなかった出来合いの総菜パックが食卓に並ぶようになった。
そんな変化が見られたら、認知症グレーゾーンが疑われます。一方で、たまに子どもや孫が遊びに来たときだけは、奮起して料理をすることもあります。ご両親と離れて暮らしている方は、普段の様子にもそれとなく注意してみてください。また、失われた料理へのモチベーションを取り戻す方法もあります。それについては、本書(120ページ)で紹介しますので、ぜひご参考にしてみてください。