働くことで得られる収入はこれまで以上に増加する

また、世の中の状況は「長く働く」ということに舵を切りつつあります。昔は60歳で定年を迎えた後に働く人はあまりいませんでしたが、現在では65歳までの雇用機会の確保が義務化されたため、60~64歳で働く人は71.5%にものぼります。また、2021年4月からは70歳までの就業機会の確保が努力義務化されたため、60代前半ほどではありませんが、65~69歳で働いている人の割合は50.3%、そして70~74歳で働いている人は32.6%と、何と3割以上もいます。私も現在70歳ですが、サラリーマン時代以上に働いています。

つまり、昔は60歳までしか収入の機会がなかったのが、現在では65歳、そして2人に1人の割合で70歳まで働いて収入を得ているのです。だとすると、50歳とはいっても、まだそこから20年ぐらいは働く可能性がありますし、体力的にも精神的にも十分その能力のある人が多いでしょう。

シニア世代のビジネスウーマン
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実際に50歳以降に働いて得る報酬というのは、いくらぐらいになるのでしょうか。

50歳からの20年間で平均8465万円稼げる

前出の「国民生活基礎調査」の2021年版によれば、2020年の全世帯の平均所得金額は564万3000円となっています。仮に60歳で定年を迎えるまではこの所得収入があり、それ以降は現役時代の半分程度の給料になると仮定した場合、50歳以降の所得合計額はいくらぐらいになるでしょう。計算すると、65歳まで働いたとすると累計の所得金額は7053万円となり、70歳まで働くと8465万円となります。

一方、支出については、総務省の「家計調査報告」によれば2019年の勤労者世帯の消費支出は月額32万3853円ですから、60歳までの支出合計額は3886万円。定年後は一般的に消費支出が現役時代の7割程度になりますから、月額約22万7000円程度です。したがって、60歳から70歳までの生活費は2724万円。現役時代の支出累計3886万円と合計すると6610万円となります。これが50歳から70歳までの生活に必要な金額です。

ということは、仮に65歳まで働いて後はリタイアしたとしても支出をまかなえますし、70歳まで働けば、仮に今貯金がゼロだとしても1800万円ぐらいの余剰が生まれます。こう考えると、50歳からお金のことを考えても遅いということは決してないのです。