売りたくても売れない「残債割れ」のリスク

借りる側にとって、50年ローンは月々の返済額が少なくてすむというメリットがありますが、当然リスクも出てきます。

一生住むつもりで購入した住まいでも、返済期間中に住宅を手放す状況にいたる場合があります。例えば、結婚当初は新居を購入するために夫婦でのペアローンや収入合算してローンを組んでようやく住まいを買ったにもかかわらず、何らかの理由で手放すという事態が想定できます。

昨今、3組に1組は離婚すると言われるように、離婚や夫婦それぞれの転勤や転職、親の介護で実家に帰る必要になったなど、人生にはさまざまな問題が起きます。その際に、ローン残債額が多すぎて住まいを売却できないという「残債割れ」に直面します。

これは、長期間の返済になればなるほど、ローンの元金がなかなか減らないために発生します。長期ローンを組めば、当然ながら利息もかなりの額になります。住宅ローンの返済方法の大半は元利均等返済であり、返済当初から元金はそれほど減少せず、毎月の返済額の大半は利息払いという状態です。

健康寿命の74歳までにローンは終わらせておきたい

したがって、住宅を買ってから5年も経過しないでやむを得ず売却することになった場合には、かなりのローン残債額が残っており、残債額が市況の売却価格よりも上回るとなれば、かなり厳しい現実が待ち受けていることになります。売却価格でもローンの完済ができないとなれば、不足分を手元資金で埋め合わせしない限り、物件の売却はできないということは認識しておく必要があります。

また、長期返済の場合は、定年後もローンの返済を続けていくことが前提になります。例えば、30歳でローンを組めばローン完済時は80歳です。定年が延長されても、現役世代と同等の給与はもらえるわけではないので、かなり厳しい老後が待ち受けているということになります。これでは50年ローンを組んでも将来、老後破産に陥るリスクが存在します。

人生100年時代とはいえ、健康寿命は74歳と言われていますので、極論を言えば少なくともこの年齢までにはローンを終わらせておくことをオススメします。このように、借り手には月々の返済額が減った分、将来のリスクが大きいということは認識しておくべきです。