地方銀行やネット銀行で、返済期間を最長50年に延ばした住宅ローンの取り扱いが増えている。住宅コンサルタントの寺岡孝さんは「月々の返済額が安くなるというメリットはあるが、住宅価格の下落というリスクを踏まえれば、安易に選ぶべきではない」という――。
階段状に積み上げたコインと家の模型
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50年ローンなら「夢のタワマン」に手が届く

住宅購入につきものの住宅ローン。住宅価格の高騰が続く昨今、超低金利のおかげで住宅価格が高騰しても、低金利でローンを組めば買うことができる状況です。中でも50年返済の住宅ローンの出現で、若年層でもタワマンが買えるように――。

しかし、今まで手が出なかった物件に手が出せるようになる「50年ローン」には、見過ごせぬ大きなリスクがあります。それは、ローン残債額が多すぎて売却したくてもできない「残債割れ」や老後破産、そして変動金利リスクです。

このようなリスクをはらんだ50年ローンがなぜ増えているのでしょうか。そこには、懐事情が厳しい金融機関(とくに地方銀行)と、高騰する不動産をどんどん買ってほしいデベロッパーの思惑が絡んでいます。

不動産価格が高騰、上限3億円に引き上げも

不動産経済研究所によれば、今年の1月から6月に東京23区内で発売された新築分譲マンションの平均価格は1億2962万円、前年同期比で6割も上回る値動きとなりました。こうした不動産価格の高騰を踏まえて、今まで住宅ローンの上限を1億円としていた金融機関が、上限を3億円まで引き上げるケースも出てきました。

共働きで世帯年収の多い、いわゆる「パワーカップル」でさえ手の届きにくい不動産価格になってしまい、資金提供をする金融機関としては借入金の上限を引き上げ、かつ返済期間を長期化せざるを得ない環境となってしまったのです。

30年以上前、当時の住宅金融公庫の返済期間は最長で25年でしたが、いつのまにか30年、35年となり、はては親子ローンや「フラット50」といった内容で、返済期間はどんどん長期化してきました。その背景には、毎月の返済負担を小さくして住宅購入の需要を喚起し、経済波及効果が大きい住宅建設を増やそうという景気対策の側面がありました。

しかし現在では、不動産価格の高騰が住宅ローン返済の長期化の要因となっているのです。