「第2の安室奈美恵」として

浜崎あゆみのデビュー当時をリアルタイムで覚えているだろうか。テレビスポットから屋外のビルボードまでありとあらゆる宣伝展開を行って、エイベックスのトッププライオリティとして扱われたことは、傍から見ていても理解できただろう。

この待遇は、彼女にとって本当に幸運だったと言わざるを得ない。エイベックスといえば、90年代初頭からtrf、安室奈美恵、globeといったアーティストを続々と大ブレイクさせていったのだが、その背景には小室哲哉というスーパープロデューサーの存在が大きいのは周知の通りだ。ただ、小室哲哉は90年代後半になると急激にヒット作が減り、さらには蜜月関係だったエイベックスとの関係に溝ができていくのである。

エイベックスとしては“第2の安室”が必要だったのは言うまでもない。一足先にEvery Little Thingをミリオンヒット・アーティストに育てていたが、次に白羽の矢が立ったのが浜崎あゆみだったのである。

いずれにせよ、徹底的にメディア露出を行い、2カ月ごとという短いタームでシングルを連発し、続々と大型タイアップを獲得していく戦略は大成功を収める。1998年8月リリースの3rdシングル「Trust」が早くもトップ10ヒットとなり、翌1999年の元旦に発売したデビュー・アルバム『A Song for ××』で一気にミリオンヒット・アーティストとなる。その後も、シングル・ヒットを連発し、押しも押されもせぬスターとなったのはご存じの通りだ。“平成で最も売れた女性ソロアーティスト”という記録も持っている(オリコン調べ)。

レコーディングスタジオ
写真=iStock.com/Vadym Terelyuk
※写真はイメージです

成功の理由は「エイベックスのごり押し」なのか

もしかしたら、あの当時を知っている方ならば、「あれだけ金をかければ売れて当然」と感じていたかもしれない。確かに、浜崎あゆみに投入された広告宣伝費が莫大ばくだいなものだったであろうことは想像に難くない。ましてやエイベックスが社運をかけて売り出したアーティストだ。一時代を作り上げた勢いあるレーベルのプライオリティ・アーティストであればなおさら、「売れて当たり前」と思われてもおかしくはないだろう。

ただ、エイベックスは彼女以外にも多数のアーティストを抱えていて、多少なりとも力を入れたにもかかわらず成功に至らなかったパターンも多い。デビュー曲だけ話題になったが、2曲目以降は続かないというのは、エイベックスに限ったことではないのだ。

浜崎あゆみの場合は、単発ではなく、99年のデビュー作から、音楽業界全体が落ち込んでくる2006年に発表した7作目『(miss)understood』まで、全作品がミリオンを記録しているのである。