会社と戦うのは労力がいる
だが、待っていたのは、こんなはずでは……という労働環境だった。
わずか1週間の研修を受けただけで“独り立ち”認定され、店頭で電話回線の契約や機種変更の対応に駆り出された。知識不足ゆえに失敗すると、耳元のインカムから「そうじゃねえから!」と叱責が飛んでくる。
一番困っているのは、なかなか休憩がとれないことだ。社員がおらずバイト2人だけで回す日は、次々やってくる客の対応に追われて現場を離れられず、朝9時から夜7時まで10時間ぶっとおしで働くことも。にもかかわらず、勤務記録上は1時間の休憩をとったことになっており、そのぶんの時給は出ないというから、労働基準法的に完全にアウトだ。
「職場は、一言でいえば“ブラック”に尽きますね。求人サイトではすごくホワイトそうに見えたのに、あとで調べたら、どの店舗でも求人を出していたっていう……。慢性的な人手不足の証拠ですよね。深く調べてから行動しないと痛い目を見るなって反省しました」
今は、シフトを詰めこまれそうになったら、予定があるとうそをつくようにしているが、それでも週4日は入らざるをえないという。
「最近はインフルエンサーがSNSで法律の知識を紹介したり、『会社を追及すれば勝てる!』と発信したりしていて、感化されている若い人もいるけど、社会の実情とはギャップがあると思うんです。会社と戦うのはすごく労力がいるし、法律の知識がすべて通用するかというと、そんなに甘くない」