巧妙化するブラックバイトの手口

「ブラックバイトは巧妙化しています。『お前働けー!』と怒鳴られるより、『店の将来が君にかかっているんだ』なんて言われるほうが、真面目で素直で無批判な学生たちはコロリとやられる。結果見事に飼いならされて、自ら進んでバイトありきの大学生活を送ってしまうわけです。本人にバ畜の認識がないことが根深い問題です」(常見氏)

もうひとつの背景は、格差社会だ。経済事情は二極化し、働かなければ大学に通えない学生も一定数いる。常見氏はこう話す。

「先日、物理学専攻で大学院進学を目指しているソープ嬢二人組と出会いました。“よく学びよく遊ぶ”という学生らしい時間を確保できるのは、家が裕福な人か、一線を越えたバイトをしている人か、という皮肉な現実がある。お酒や車、旅行をはじめ『若者の○○離れ』などとよく言われますけど、実態は『金と時間の若者離れ』ですよ」

ユウタさんに、「最近、何をして遊びましたか?」とたずねると、しばらく考えこんだのち、「友だちとお茶をしました」と返ってきた。遊びたい盛りの男子大学生の答えが「お茶」とは……。少々面食らった。

物価がどんどん上がる今、生活を維持するには、どうしてもバイト中心の毎日になるのだという。私生活だけでなく学校生活にも支障が出ていて、授業で出た課題に取り組む時間がとれず、他の授業中に内職することもあるそうだ。