chocoZAPにある3つの死角

このように圧倒的なスピードで成長するchocoZAPですが、このまま成長を維持できるのでしょうか。また、同店を展開するRIZAPグループに死角はないのでしょうか。私は3つほど懸念点があると考えています。

1点目はマシンの故障です。SNSでは「マシンがまた故障している」といった声が写真付きで多数あがっています。実際に私が通った店舗でも「ピンが外れています」と書かれた修理対応願いの札がいくつかおかれていました。スタッフがいればすぐに対応可能でしょうが、常時スタッフはいないため、トレーナーが巡回してくるまでは対応できません。

RIZAPグループの調査ではマシンの故障は1.0%未満(2023年8月時点数値)ということですが、実際にはもう少しあるのではと思います。現在、壊れにくいマシンの開発と共に、研修を受けたトレーナーが48時間以内に故障を直す体制を整えていると言います。今度はこの修理対応スピードがここからの成長のためには必要になってくるでしょう。

2点目は店舗のクリンリネス(清潔さ)です。新しい店が多いので店内は比較的綺麗なのですが、半年もたってくると汚れが目立つ店舗もでてきます。靴の履き替え無し、掃除も利用者ができるだけやる体制になっているため、清掃が行き届かない例も散見されます。

RIZAPグループでは「フレンドリー会員」を試験的に導入して、トレーニングのついでに週に1~2回、店内清掃をしてもらい、月額料金を割引する制度も試験導入し始めています。こうした利用者参加型の店舗づくりがどこまで機能するか注視したいところです。

最大の懸念点は親会社

3点目はRIZAPグループ株式会社の経営状況です。同社は「すべての人が自分自身の価値を実感できる人生を送るために」をミッションに、美容系事業、保育系事業、ECモール事業、ファッション事業、住宅事業などを展開する会社を次々と買収し傘下におさめてきました。

結果的に総合生活提案企業となり、売上高も1600億円を超えるまでになりました。しかし23年3月期の当期純利益は127億円の赤字です。23年10月末には傘下の住宅会社「創建ホームズ」を41億5000万円で売却すると発表し、調達資金はchocoZAPの投資に回し成長を加速させるとしています。

結果、24年3月期のグループ最終損益は90億円の赤字という見通し(当初計画据え置き)。来期以降は借入金も減少し、自己資本比率も高まるとしていますが、当面の目標であるchocoZAP2000店舗達成にはさらなる投下資金が必要です。

【図表3】大手フィットネスジム企業の損益比較表

エニタイム、カーブスは、ジム事業以外には手を出していないため、好業績を続けています。売り上げは確かにRIZAPグループの方が大きいですが、利益面では大きく後れをとっています。

先行投資で費用がかかっているだけとは言うものの、赤字幅が小さくなっていくのかどうかが財務面から見て気になったポイントです。