「食事」も改善理由の一つと考えられる

そのような生活が半年ほど続いた後、Aさん自身に不眠や朝に強い抑うつ気分などが出現し産業医面談にいらっしゃいました。すぐにメンタルクリニックに通いはじめましたが、本人の強い希望で内服薬はなしでした。しかし、実家の母親が来てくれて家事を手伝ってくれることになり、2カ月ほどして新しい生活パターンが落ち着いてくると、Aさんの症状は改善してきました。

子供たちが祖母の手作り料理を喜ぶため、Aさんの体調が戻った後も、祖母に食事の作りおきは継続してもらっていたそうです。次第に奥様も改善しました。

このケースの場合、Aさんがメンタル不調になった原因は、家事と育児の負担の増加、奥様の病状への不安などいろいろ考えられます。改善した理由も同様に、いろいろあると思います。

しかし、定期的な産業医面談の中でAさんが「やっぱり食事が大切だって身に染みました。いろいろなものをちゃんと食べるということ、手作りのものを食べるということ、妻が不調になってから、僕の家事力ではそれはできていませんでした」とおっしゃったのが、印象に残った症例でした。

作り置きをタッパーに入れている女性の手元
写真=iStock.com/mapo
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社会人になってから「1日1食、体重は10kg減」の女性

一方、Bさんは入社2年目の20代の一人暮らしの女性でした。メンタル不調があったものの、コロナ禍の在宅勤務体制のため発覚が遅れましたが、仕事中にも連絡が取れないことが頻回あったことで、上司や人事が気づき、産業医の私との定期面談を行うようになりました。

もちろん、Bさんはまず医療機関で治療を開始しました。定期的にBさんとお話ししてわかったことは、特に職場でもプライベートでもストレスに感じることはないということと、新卒で入社したときに比べて体重が10kgほど減ったということでした。

学生時代から食欲はもともとあまり旺盛な方ではなく、社会人になってからは忙しい時は1日1食が普通だったようでした。その1食も、カロリーを補うためにチョコレートやお菓子など、高カロリーなものを意識して食べていたとのことです。また、大学卒業まで実家暮らしだったこともあり、食事を自分で作ったことはほとんどないこともわかりました。