「でも、会えてよかったです」

トモヤさんが指定したお店は新宿ルミネにあるかわいらしいカフェ。店の前で緊張しながら待っていると、約束の時間ぴったりに彼が現れた。そして目があった瞬間に、お互いが「違う」と感じる空気が流れた。トモヤさんは決して写真をよく見せていたわけではない。それなのに、なんだろう。表現が難しいが“別人”という感覚なのだ。マッチングアプリではよくあることと聞く。昂揚していた気分が一気に冷めていく。

それにしても、眞一郎さんの時もそうだったが、“違う”と思ってからカフェで過ごす時間のなんと長いことか。会話を続かせようと二人で努力し、そしてどちらも話に上の空だった。コーヒーを飲み終わると、

「でも、会えてよかったです」

私の目を見てトモヤさんが言った。「でも、」の前はきっと「2回目につながらないけれど」だろう。

カフェでコーヒーを飲んでいるカップル
写真=iStock.com/Farknot_Architect
※写真はイメージです

「そろそろ……」と私が腰を浮かすと、トモヤさんがほっとしたようにうなずく。

婚活するようになって改めて感じたこと。それは会計伝票がいつも男性側のほうに置かれていることだ。今回のように男性側が明らかに若くても。一杯600円のコーヒーだから二人で1200円。とりあえず私が千円札をテーブルに置くと、トモヤさんは何も言わずにそれをつかみ、会計に向かう。割り勘にしておつりを返してくれるかと思ったが、彼はそのまま店の外に出た。ここは年上の眞一郎さんとまったく違う。

「それじゃ、また」と私が頭を下げると、トモヤさんはそれには答えず、あいまいな表情をして背を向ける。別れた瞬間、虚しい気持ちになった。

再婚する場合も「恋愛した延長線上」で結婚したい

「トモヤさん、どうだった?」

帰宅してから娘に聞かれた。

「……こなかった」

枕に顔をつっぷして私はうめく。「へ? こなかったの?」と娘が首をかしげる。しばらくして意味がわかったのか私の後頭部をなでてくれ、「だから幻想だって言ったでしょう」と笑った。

婚活しても、なかなか恋愛が始まらない――。

私の思いを述べると、プレジデントオンライン編集長の星野貴彦さんが「婚活とは条件設定をしているビジネスですから」とこともなげに言う。

「好きならどんな相手でもいいのではなく、条件のあう相手でなければ好きになれない、というのが現代人のつらさです。とりわけ中年以降にロマンチックラブを成立させるのはかなり難しいのではないでしょうか。だから『好きな人と結婚する』というより、『結婚してから相手を好きになる』という人が多い気がします」

そうなのだろうか。私は一度目の結婚が恋愛からスタートしたし、やはり再婚する場合も恋愛した延長線上に結婚があってほしいのだが、それは難しいのだろうか。

ぐるぐると思考し、少なくともアプリで条件からマッチングし、相手に幻想を抱くのはやめようと思った。最初にリアルで会う。そこで理想通りにいかなくても幻滅しても、そのほうが「恋愛」が始まる可能性はまだ高いのではないだろうか。そう思い、私は再びリアルな「婚活パーティ」の場に戻るのであった。(続く。第5回は<なぜ「おごらない男」に腹が立つのか…婚活中の40代女性ライターが「悔しくて泣いた」という秋葉原の夜>)

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