32歳で大学職員のトモヤさん

しかし32歳のトモヤさんとは、マッチングして2日で5往復に達した。国立大学出身で大学職員、年収は非公開。最初に申し込みをもらった時は、ひとまわり以上年下だったので遊びや詐欺ではないかと疑い、率直に聞いてみた。

桜が咲いている入学シーズンの東京大学
写真=iStock.com/wnmkm
※写真はイメージです

〈トモヤさん、申し込みをありがとうございます。ただ、いきなり不躾なおうかがいなのですが、どうしてひとまわり以上年上なのに? と思いました。トモヤさんのような感じならいくらでも同世代の方がいらっしゃるのではないでしょうか?〉

すると1時間後にトモヤさんから返信。

〈はじめまして。マッチングありがとうございます。年齢は気にしてません。ひろこさんの笑顔がステキだと思って申し込みをしました。すごく可愛いと思ったんです〉

ストレートに褒められてうれしかった。一般的に40代以降の女性は、男性から褒められる機会が減るので、こういうことに気をつけなくてはいけないことは頭ではわかっている。だが恥ずかしながら、そのまっすぐさにクラッときてしまった。

「ひろこさんと話していると落ち着く」

トモヤさんとはアプリのメッセージ上で5往復のメッセージ交換をしてから、LINEに移行し、それからも毎日やりとりを続けた。

内容は、たとえば私の住んでいるマンション前にカニが歩いていたので、写真を撮ってトモヤさんに送ると、〈おー! よく見つけましたね。僕の家の前には先日、キノコが生えてました〉など、たわいもない話の繰り返し。けれども私にはそれが新鮮だった。やりとりを重ねる中でトモヤさんが理系出身であることや、前の職業や家族構成などもわかり、少なくとも騙されている危険性はないと感じ、徐々に自分の心が惹かれていくのも感じた。

〈一度、電話で話したい〉

私がお願いするとトモヤさんからかけてくれ、そこでも紳士的な対応だった。下ネタは一切ない。彼が「ひろこさんと話していると落ち着く」と言ってくれ、その言葉にドキドキもした。

そしてマッチングして2週間後の土曜、新宿のカフェで会うことになったのだ。

「めっちゃ緊張する~。トモヤさん、ほかにも会っている女性はいるのかなあ」

会う前日に着ていく洋服を選びながら私が騒いでいると、娘がちらりとこちらを見て言った。

「あのさ、お母さんはまだ幻想のトモヤさんしか見ていないんだからね。何も始まっていないんだから」

娘の言う通りだった。