民放でさえスクランブル化はできない

実は「あまねく全国において受信できる」ことを義務付けられていない民放でさえ、スクランブルをかけることはできない。

「公共の電波」を使っている以上、受信の自由、受信の権利、知る権利に応えなければならないからだ。番組編成上も、ドラマやお笑い番組だけでなく、クイズ番組などの教養番組、ニュースや天気予報のような情報番組も含めるなど地域住民のニーズに応える「総合編成」にしなければならない。

こういった義務が免除されるのはWOWOWのような衛星波を使った有料放送だけだ。衛星波は、一般国民は使えず、衛星など設備を持つものだけが使えるからだ。

NHKは需要に見合った規模に縮小せよ

したがって、繰り返すが「スクランブルをかけろ」ではなく、シンプルに「受信料は廃止せよ」が正しい。そして、世界はこの方向に向かっている。

つまり、放送は、公共放送も民放と同じように、広告を流して無料にする、そして放送コンテンツを徐々にネットに移し、こちらはサブスク料を取る。広告料とサブスク料で足りなければ、国が補助金を出す。その前に、このような収入でもやっていける規模になるまでNHKを徹底的にダウンサイジングしていく。

有馬哲夫『NHK受信料の研究』(新潮新書)
有馬哲夫『NHK受信料の研究』(新潮新書)

NHKは、ネットで「あまねく日本全国に」コンテンツを届けられるので、もう全国的放送インフラを維持する必要はない。受信料を取る正当な理由はもはやない。

放送に関していえば、これまでのような全県に直営局を持つのではなく、民放と同じように、経営上独立の地方局とキー局から成る緩やかなネットワークになればいい。したがって今のような巨大組織である必要はなく、地方各局が収入に見合った規模で単独でやっていけばいい。

もともとGHQはこのような民放ネットワークと同じような放送ネットワークにしようと考えていた。だが、その方針を、受信料強制徴収に凝り固まった通信官僚とNHKが覆したのだ。

NHKは昔も今も「受信料を無料にして、放送サービスを提供する」ことができる。放送法の受信契約義務規定など関連条項を削除し、しっかり組織のダウンサイジングをすればいいだけだ。日本国民の半分近くがNHK総合放送を1週間に5分も見ていないのだから、それに見合った規模にすればいい。国民が民意を示せば、それは不可能ではない。

NHKが可哀そうだという人もいるかもしれない。だが、これは国鉄、郵政、大手銀行、東芝も通ってきた道だ。

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