「いい人」=「年収が高い」なのか
「どうして誰とも連絡先を交換しなかったの?」
家に帰ると娘に責められた。
「“いい人”がいなかったから」
娘は聞こえるように「はーっ」とわざとらしく肩を落とす。「あのね、とりあえず許せるレベルなら自分からいかないと」と言う。はいはい、わかりました、と答える。内心はその許せるレベルがいなかったんだよ、とつぶやく。
私の心の声が聞こえたらしい。「まぁ、ちょっとイベントの見込み違いだったかもね」と娘。そして再びスマホで婚活業界大手企業が主催する婚活パーティのサイトを検索しながら、「婚活パーティの中に“年収600万円以上”とか、男性の参加条件が厳しいイベントもあるよね」と話をふってくる。
「こういうところに行く女性は、その年収の男性が目当てというより、よりいい人を見つけるためなんじゃない?」
ということは、「いい人」=「年収が高い」ということだろうか。私は男性の経済力に頼って結婚したいとは思わない。強がっているわけではなく、対等な関係でなくなるのがいやだからだ。離婚したいけれどできない女性の大半は、経済的理由であるのを見聞きしている。
銀座駅すぐそばの居酒屋での「5対5」
けれども、参加条件が厳しいイベントにどんな男性がくるのか、心惹かれた。そして「土曜夜の飲み会」に目が留まった。
対象は、男女ともに40~47歳。女性は「独身で、明るく恋愛に前向きな人」という条件のみだが、男性は「独身・年収600万円以上で気配りができる人」というずいぶん高いハードルである。会費も女性4000円に対し、男性は7900円。たしかに“いい人”がくるかもしれないと期待した。この時の私にとっての“いい人”とは、仕事関係者のように自分の世界を理解してくれる人だ。少なくとも「執筆業」と伝えた時、「新聞の投書」などと言わない人……。
それでも開催寸前まで私は迷っていた。当日、募集サイトに男性は満席、女性は「残り1名」と表記されていたため、私は滑り込みでクリックしたのだった。
銀座駅すぐそばの居酒屋での開催。婚活事務局のスタッフは出席者の身分証を確認し、皆の自己紹介が終えるまで見守って、あとは退席するという。長テーブルに男性5人が横一列に並び、その向かいに女性5人という典型的な合コンスタイルだ。
男性は奥から会社員、会社員、不動産経営、営業、会社員と自己紹介。女性側職種は、5人中なんと3人が幼稚園教諭。残るは経理の人と、ライター業の私。皆、「職場での出会いがない」と言う。