幸せな人生を歩むためのコツはあるのか。漫画家・文筆家のヤマザキマリさんが10代の頃にフランスで出会った“ポール叔父さん”は、妻と離婚して年下の女性と再婚し、生まれ故郷のパリを離れて南仏へ移住した。一時は親戚中に責められたのに、あまりに幸せそうだからと別れた前妻も遊びに来るようになったという――。
※本稿は、ヤマザキマリ『扉の向う側』(マガジンハウス)の一部を再編集したものです。
14歳の冬、欧州ひとり旅に出た
14歳の冬、1カ月にわたる欧州ひとり旅のスタート地点はパリだった。空港には母の友人のカルメンさんが迎えに来てくれているはずだったが、荷物を受け取って到着ロビーへ出たところで、真っ先に「マリ⁉」と私に声をかけてきたのは、頭髪の薄い、見知らぬ初老のおじさんだった。日本にやってきたカルメンさんと初めて会った時の私はまだ4歳。それから10年経った私に気がつかなかったら困るからと、母のアドバイスで、あらかじめ彼女には自分の似顔絵を送ってあった。その似顔絵を送迎口で両手で広げて持っていたのは見知らぬフランス人だったのである。「これは君だね?」と強烈なフランス語訛りの英語で改めて確かめられ、私は事情を飲み込めないまま恐々と頷くしかなかった。
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