「憧れてしまったら超えられない」

大谷がホームランダービーに出場することで、日本人はメジャーリーガーのパワーには敵わないだろうというマイナスの固定観念を、前向きなマインドに変えたかもしれない。最強の米国代表には太刀打ちできないかもしれないという弱気を、強気なマインドに変えたかもしれない。

勝負を挑む前、まずはメンタルの偏見を打ち破る必要がある。WBC決勝、試合前の声出しで伝えたメッセージは、今後も語り継がれる名言だ。

「僕からは1個だけ。憧れるのをやめましょう。(相手の米国代表には)ファーストにゴールドシュミットがいたり、センターを見たらマイク・トラウトがいるし、外野にムーキー・ベッツがいたり、野球やっていれば誰しもが聞いたことがあるような選手たちがやっぱりいると思うんですけど、今日一日だけは、憧れてしまったら超えられないんで。僕らは今日超えるために、トップになるために来たので。今日一日だけは彼らへの憧れを捨てて、勝つことだけ考えていきましょう。さあ行こう!」

斎藤庸裕『大谷翔平語録』(宝島社)
斎藤庸裕『大谷翔平語録』(宝島社)

試合後、改めて真意を語った。

「僕らは知らず知らずのうちに、アメリカの野球にリスペクトを持ってますし、ただでさえ素晴らしい選手たちのラインアップを見るだけで、尊敬のまなざしが弱気な気持ちに変わることが多々あるなかで、今日一日だけはそういう気持ちを忘れて、対等な立場で、必ず勝つんだという気持ちをみんなで出したいと思っていました」

何事も戦う前に、挑戦する前に諦めない――。ホームランダービー出場も、WBC優勝も、二刀流の挑戦も、屈しない強い気持ちがあってこそ。そんなメッセージが伝わってくる。

【関連記事】
【第1回】メジャー本塁打王でもWBC大会MVPでも「世界一」ではない…大谷翔平が次々と記録を打ち立てる本当の理由
これだけは絶対にやってはいけない…稲盛和夫氏が断言した「成功しない人」に共通するたった1つのこと【2023上半期BEST5】
なぜ羽生結弦は3度目の金メダルを逃したのか…北京五輪で「誰も跳ばない4回転半」に挑んだ本当の理由
なぜ阪神は18年も優勝から遠ざかっていたのか…阪神OB・江本孟紀が見る「阪神低迷の2つの根本理由」
カエル研究の道に進んで本当に良かった…東京五輪金メダリストがボクシング引退後の生活に大満足のワケ