10月1日、日本郵政グループの郵便事業会社と郵便局会社が合併し、「日本郵便」が発足した。この一環として一部の郵便局で「通帳預かりサービス」を開始することが発表された。
通帳預かりサービスとは、通常貯金の払い戻しを依頼したいとき、郵便配達人に通帳を預ければ、顧客に現金と通帳が届けられるというサービスである。顧客にとっては、郵便局にいかなくてもカネを届けてもらえるというメリットがある。郵政公社時代にはそもそも可能だったこの仕組みは、民営化後一部過疎地でのみ実施されていた。今回の日本郵便発足を機に、事業化したということである。
発表を受けて、一部では「詐欺につながるのでは?」と話題になった。しかし、高齢者にとって、このサービスへのニーズは切実だ。
「地域金融機関が破綻・統合等で激減し、機関数では4分の1になった。ATMしか利用できず、困っている高齢者は多い。全国で約2万4000局ある郵便局は重要なアクセス・ポイント」と成城大学 社会イノベーション学部教授の村本孜氏は言う。
さらに、このニーズは過疎地にとどまらない。東京の巣鴨信用金庫「年金孫の手サービス」など、各地の信用金庫や農協などでも「年金無料宅配サービス(年金を行員が自宅に届けるサービス)」がすでに広がりを見せている。
「詐欺事件は都市で多い」と村本氏は指摘したうえで、職員の金融知識の付与や、社内の監査体制の必要性を説く。便利なサービスが詐欺の道具にならないよう、体制づくりが必要だ。
(ライヴ・アート=図版作成)