オーディションでジャニー喜多川氏と対面した
自分の詳しい分野が社会問題になると、こんなにも社会の歪み、報道のいい加減さ、世間の危うさ……といったものがくっきりと見えてくるものなのだということを日々実感している。
筆者は、小学生のときにジャニーズのタレントに憧れ、今もファンを続けている。2009年には“ジャニオタ男子”として初めてメディアに登場し、2019年には『ジャニーズは努力が9割』(新潮新書)という書籍を執筆している。
2004年にはジャニーズJr.のオーディションを受けたこともあり、その日はジャニー喜多川氏と対面を果たした。
ジャニーズのタレントになるという夢を叶えることはできなかったが、その後も彼らを人生の指針とし、ジャニーズのエンターテインメントを浴び続けてきた。
先に断言しておけば、ジャニー喜多川氏の性加害に関しては巨悪だと強く認識している。オーディションを受けた当日に被害にあったという証言もあり、自分が夢見た未来の先に被害を受ける可能性もあったかもしれないと考えると恐ろしくなることもある。
ただそれでも、“反ジャニーズ事務所”に一方向に一気に流れる風の勢いに、また別種の恐怖を感じる。先日の会見に参加した際には、一部記者による“正義”の名の下に対象を盲目的に追い詰めるような姿や、他人の夢を嘲笑する悪意に直面し、気分が悪くなってしまったほどである。
本稿では、決してファンを代表しようというわけではないが、いちファンとして、この現状に対して考えていることを綴っていきたい。
性加害は絶対に肯定できないが、タレントは応援したい
冒頭から恐縮だが、この話は非常に伝わりにくい話だと認識している。筆者は、雑誌やWEB媒体・自身のSNS上で関連することを発信しているが、この騒動が大きくなればなるほど、ネット上で「ジャニーズを応援している」と言うと、「性加害を肯定するのか!」といった言葉を浴びることが増えた。
実際、ジャニーズ事務所のファンクラブからは会員向けに、タレントを応援していることを理由にSNSで誹謗中傷を受けるファンへのおわびのようなメールも届いていることから、他にも同じような経験をしている人は多いのだろう。
ただ、筆者を含む多くのファンは「性加害を肯定するわけではない」が「ジャニーズタレントの応援をしている」という人が大半を占めるはずだ。
ジャニー喜多川氏のした性加害は絶対に肯定できないが、ジャニーズのタレントが好き――。それだけのことなのだが、ネット上では理解されることが難しいようだ。
おそらく、その根底にはジャニーズ事務所自体が、良くも悪くもジャニー喜多川氏個人の才能に直結した形で誕生し、大きくなっていったという構造があるだろう。