※本稿は、星友啓『脳を活かすスマホ術 スタンフォード哲学博士が教える知的活用法』(朝日新書)の一部を再編集したものです。
使い方や目的でメンタルに与える影響は変わる
第1章で、スマホの良し悪しについての最新研究を解説しながら、SNSがもたらすメンタルへの影響についてお話ししました。有力な研究226本をメタ分析したものです。
これまでの研究では、スマホの良い影響も悪い影響も、双方ともに示されてきました。それらをすべてガッチャンコしてみると、スマホの良さと悪さが相殺して、使用時間とメンタルの相関が見つからなかった。だからこそ、どんなスマホの使用が悪影響を及ぼし、どんな使用が良い影響を及ぼすのかを研究する必要がある。そんな話をしたわけです。
実際、ソーシャルメディアの使い方はさまざまです。おいしそうなもの、便利そうなもの、楽しそうなもの、インスタ映えするものなど、いろんな人の発信をランダムにあれこれ見て楽しむ。もともと親しい友達とのコミュニケーションに使う。自分の活動や趣味を他の人とシェアする。その他にもいろんな使い方があります。
また、使用目的も人それぞれで、もともと持っているポジティブな人間関係を維持したり、さらに深めていきたいという人もいれば、今の人生がうまくいっていないから違う自分を見つけたい、新しい自分になりたいという人もいる。そうした目的の違いによっても、SNSがもたらす影響は変わってくるのが知られています。
この章では、スマホのSNSがもたらすメンタルへの影響について、深く掘り下げていきます。
SNSがメンタルに良い結果をもたらすかどうかは、使い方や目的で大きく左右されます。効果的なSNSの使用法を実践することで、スマホのゴールデンタイムを実現させていきましょう。
「自分から発信をする」方がメンタルにはいい
さっそく、近年になって確認されてきた、メンタルに良いSNSの使い方をご紹介します。
まず重要な点が、SNSで発信するか、受信するか。
最近の出来事やニュースに関して自分のメッセージを伝えたり、「面白い!」「おいしい!」と思ったものの画像をシェアしたり、SNSはたくさんの人に自分から情報を発信する便利なツールです。
一方で、他の人からの発信を受信するツールでもある。最新情報をゲットしたり、知らなかった考え方に「そうかそうか」と感心したり、豪華なリゾートに「いいなあ、行きたいなあ」と妄想したり。SNSは情報を受け取るツールでもあります。
そして、最近の研究で明らかになったのは、自分から発信をしている人たちの方が、心のウェルビーイングが保たれているということです。
そう言われてみれば、他人の羨ましい画像を見続けていたら、そうではない自分に悲しくなってしまうこともあれば、自分とは異なる意見を見ながら何も言わずにいれば、悶々としてしまうこともあるかもしれません。
どうしてSNSでの発信が心理学的にメンタルに良いのかについては、少しあとで詳しく説明していきます。