第一志望校から「浪人生の入学は前例がない」と拒否される

ところが、がんを患い、浪人した学生を受け入れた前例がないからと、入りたいと熱望した高校から受験を断られる。母親は、その事実を山本さんにどう切り出そうか迷ったが「義務教育ではないから、学校側からそういわれると受験できない」と伝えた。

「結局、前例はないけれど、受験を許可すると言ってくれた高校が1校あってそこに進学しました。同時期にがんで入院していた有名大学の付属小学校に通う年下の男の子は、小学校の出席日数が足りなくても義務教育である中学までは進学できたが、高校へは進めなかったと、後になって聞きました。

医師から、『大人のがんは、生活習慣などで理由のつくものが多いけれど、子どものがんは原因が分からないものも多く、あなたのせいじゃないから』と言われていました。

自分が悪いのではないのに、高校の受験で、なぜこんなにつらい思いをしなければいけないのかと思いました」

14、15歳で数々の試練を越えた山本さんは大学の看護学部に進み、現在まで再発もせずに「寛解」の状態で看護師として働いている。

将来、妊娠するために卵巣ごと凍結

入院の初期に、両親は「化学療法が始まると、妊娠は無理です」と医師から告げられたという。「排卵を誘発して卵子をとる方法もあるが、がんを取りきるだけとってしまいましょう。待っている間に、がんがまた根をはやしてしまうかもしれない。やるとすれば卵巣ごと切除して保存するしかありません」

女性の腹の超音波検査
写真=iStock.com/PonyWang
※写真はイメージです

「母は、同じ女性の立場から娘の将来を思って、選択肢を残しておいてほしいと医師に伝えたそうです。そこで私も両親、小児科の医師、産婦人科の医師、それぞれの立場からの話を聞きました。

悩みましたね。14歳ですから、自分が将来結婚するかもわからず、子どもを持つということが想像できませんでした。しかし将来、もしそのことで自分が悩んで、悲しい思いをするのだったらやはり選択肢は残しておいたほうがいいと思って……。化学療法が始まれば、卵巣はダメージを受けるので、やるなら今しかない、と『受けさせてほしい』と両親に話しました」

母は納得したが、父は「凍結にはお金がかかるんだよ」と立ち上がって声を荒らげた。卵巣は健康だから、保険診療の適用にはならない。自由診療だ。

入院中の医療費に関しては申請により小児慢性特定疾病医療費助成制度の対象で、無償だ。だが、卵巣の凍結に関しては、手術のみで60万円ほどかかるという。