失敗を反省するより成功を積み重ねよ

私は学生時代、ボート競技の日本代表選手としてローマ五輪に出場しました。ボート競技で優れた記録を出すチームには共通点があります。五輪クラスの漕ぎ手の能力には各チームそれほど差はありません。意外かもしれませんが、記録を大きく左右するのは指揮を執るコックスの能力なのです。これは会社にもあてはまります。ボートを動かす漕ぎ手は社員、私はコックスのような役回りです。

ボート競技では、たとえば八人の選手がオールを漕ぎますが、各自の回転数が微妙に狂ってくると、ちょうどエンジンブレーキがかかったような状態になります。タイミングのずれた漕ぎ手の動きはマイナスにさえ作用するわけです。

会社という組織体にも、ある種のリズムと勢いが必要です。社名である「積水」のごとき勢いを組織に持たせるためにはどうしたらいいのか。常にそのことを考え、会社という組織の舵を引き、号令をかけ、みんなの念(おも)いを一つにしてゆく。それが経営者としての私の仕事であると考えています。

組織として活気を出すためには社員一人ひとりの「やる気に火をつけること」が重要です。どうやって部下の心に火をつけるのか。私自身の体験や部下を育てた経験から感じるのは、「勝つ」ことの大切さです。

よく「失敗から学べ」と言われます。上手くいかなかったときに、「原因はどこにあったのか」と分析するわけですが、その反省を活かして次に勝つというのは現実にはなかなか難しい。それよりも、成功から得るもののほうが数倍大きい。たとえ小さな案件でも一度、勝利の味を覚えさせれば、事業は順調に回っていきます。

徹底した現実主義を説く『孫子』も「負けないこと」を強調しています。おそらく「小さな戦いだとしても、とにかく勝つこと。小さな勝ちを積み重ねれば、大きな国も最後には倒せる」と考えていたのではないでしょうか。

その意味では、組織の活性化につながる「小さな勝ち」の積み重ねこそが、一気の勢いを生む「積水」の源だといえるのかもしれません。

(守屋 淳=インタビュー 久保田正志=構成 川本聖哉=撮影)