40年間の労働で定年後40年を賄えるわけがない
日本をはじめ先進国はどこも「人生100年時代」になって、60歳で仕事を辞めたら余生は40年もある。20代から60代まで40年間働いて稼いだお金で、マイホームを買い、子どもを大学まで行かせ、なおかつ定年後の40年間を夫婦で安心して暮らせるなんて魔法があるわけがない。1000兆円を超える天文学的な借金を抱える日本国が、すべての高齢者にじゅうぶんな年金を払いつづけられるとも思えない。
こうしてみんなが不安になるのだけど、60歳の定年後も仕事をつづけて、年収300万円得られるとしよう。70歳まで10年間働けば3000万円、80歳まで20年間なら6000万円だ。
「安心して老後を過ごすには、年金に加えて5000万円の金融資産が必要」といわれて途方に暮れているひとがたくさんいるけど、この不安は長く働くことでかんたんに解決できる。
老後問題というのは「老後が長すぎる」という問題なのだから、老後を短くすれば問題そのものがなくなってしまう。105歳まで現役だった医師の日野原重明さんには「老後」などなかった(若い君にはまだ関係ないかもしれないけど)。
「生涯共働き」は最強の人生設計
「世帯内の人的資本の数を増やす」というのは、ようするに共働きのことだ。子育てが一段落した40歳から20年間、妻がパートか非正規の仕事で年200万円の収入があれば、60歳までの20年間で4000万円だ。夫といっしょに80歳まで40年間働けば8000万円になる。
この単純な計算からわかるように、夫1人が定年まで働いて、60歳で退職して年金生活する家計と比べて、「生涯共働き」は(夫の6000万円と妻の8000万円で)80歳までに計1億4000万円の「超過収入」を得ることができる。ゼロと1億4000万円では、人生最後の20年間の「格差」は天と地ほどになるだろう。「生涯共働き」は最強の人生設計なのだ。
このようにして、アメリカやヨーロッパなどの先進国では専業主婦はいなくなり、housewifeは英語ではほとんど死語になった。海外で「あなたの仕事は?」と訊かれて「ハウスワイフ」とこたえると、「病気や障がいで働けないかわいそうなひと」と思われることを覚えておこう。
ここまでは「妻がパートか非正規で年収200万円」という設定にしたけど、これからの日本は、子どものいる女性も男性と同じように働けるようになっていく(すくなくとも、そういう社会にしようとはしている)だろう。これは、「日本はぜんぜん男女平等じゃない」と国際社会から批判されているからであり、人手不足がいよいよ深刻化して、女性に働いてもらわないとどこも仕事が回らなくなってきたからでもある。