なぜストローだけが「使い捨ての代名詞」なのか

主な論点について図表1を参照していただきたい。

【図表】シバセ工業の磯田社長が掲げる主な論点
※法政大学の井上善海教授が自著『衰退産業の勝算』(幻冬舎)の中でシバセ工業を取り上げ、経営哲学などを詳しく書いている。

プラスチックストローは誰にとっても身近な存在であり、使い捨て商品の代表格に見られがちだ。

磯田は「世の中には使い捨てでない商品は一つもない。時間と価値が違うだけ」と強調する。ざっくりと言えば、ストローが10分で使い捨てであるのに対し、車は20年、家は100年で使い捨て。値段も加えれば「ストローは10分で1円」「車は20年で300万円」「家は100年で2000万円」となるという。

「車や家と同じようにストローも基本的に処分されます。山や川へ直接ポイ捨てされているわけではありません。それなのにストローだけ使い捨ての代名詞になっているのはおかしいです」

プラスチックストローと紙ストロー
撮影=プレジデントオンライン編集部
プラスチックストローと紙ストロー

脱プラ運動の旗手「きっかけが必要だった」

実は、「脱プラ運動の旗手」フィグナーもプラスチックストローだけを問題視しているわけではない。プラスチックストローはあくまで象徴であるとの立場なのだ。

ATTV2カ月、衝撃的なウミガメ動画が拡散中の2015年11月のことだ。すでに有名人になっていた彼女は米環境団体「プラスチック汚染連合(PPC)」とのインタビューに応じ、「世界が廃プラ問題に関心を持つようになるためにはきっかけが必要。それがプラスチックストローでした」と指摘している。

ATTV7年の2022年には別のインタビューでも同様の見解を繰り返している。

「人間活動によって大量の廃プラが海へ流れ込み、生態系を破壊しています。それを象徴しているのがストローです。商業用の漁網と違って誰にとっても極めて身近だからイメージしやすい。世界中の人々が動画を見て、自分が捨てたストローのことを思い出してほしい。ウミガメを苦しめた責任の一端は自分にあると思うかもしれないから」