会社を分離するべし

ここまでのことを総合すると、ひとつの企業体としてのジャニーズ事務所がこのままの状態で生き延びていくのは、かなり無理があると考えます。

ひとつは性加害の被害者が、ジャニーズという名前に嫌悪感を抱く人が少なくないこと、一般市民の中にも同様の人がいることが挙げられます。海外でも一部に同様の反応があります。

このままジャニーズ事務所が存続した場合に、最も大きな影響を受けるのは所属タレントたちを使っている企業です。彼らの中にはすでにCMなどでの起用を中止する動きも出ています。

今、企業では、「コンプライアンス(法令順守)」がとても厳しく求められています。とくに、上場している会社では以前とは比較にならないほどその点について厳格で、それを守ることが取引先の条件であることも少なくありません。

そうした中、今回の事件、そしてそれを長らく隠蔽いんぺいしてきたジャニーズ事務所の企業体質に対して大きな疑問を持っているCMのスポンサー企業も少なくありません。海外メディアや国連が注目するという状況下では、グローバル展開する企業は、なおさら敏感にならざるをえません。

先にも述べたように、ジャニーズ事務所所属タレントの知名度や好感度はとても高いので、タレントたちを使いたい、使い続けたいという要望は今もあります。しかし、ジャニーズという器の中にそのタレントたちが入っている限りは、使いづらいというのが企業の本音でしょう。

また、こういう不祥事に対する対応では、とくに横並び意識の強い日本企業においては、主力企業の一部がジャニーズ排除という選択をした場合には、多くが右に倣えとなることが容易に予想されます。

一方、今回の事件の被害者の中には、責任を果たしてもらう意味からも、会社の存続を願っている人たちももちろんいます。

以上のような状況において、問題を解決するには、私は、経営コンサルタントとして次のように考えます。

会社を2つに分けることです。ひとつはジュリー氏が100%の株式を保有し、取締役として残る会社です。こちらは、被害者の救済、補償を専門にやる会社です。ジュリー氏も、被害者の救済、補償に専念すると言っています。

もうひとつの会社は、従来通りのタレントのマネジメント活動を行う会社です。ただし、こちらは、ジュリー氏の影響を排除するために、株主として外部の人、例えばテレビ各局などが出資する会社を設立します。もちろん、社長はじめ取締役の過半数を外部の株主などから選任し、コンプライアンスやガバナンスの観点から、公正な立場の社外取締役を複数人入れることも必要でしょう。

記者会見では法令順守を徹底するためにチーフコンプライアンスオフィサーを置くと言っていましたが、外から雇ってきたとしてもしょせん内部の人なので、十分に機能するかどうかは不透明です。内部だけでなく、徹底した外部からのチェックが必須になります。

会社を2つに分けること以外にもすべきことがあります。それはやはり、タレントマネジメントのための新会社では「ジャニーズ」という名前を使わないこと。ファンや所属タレントの中には愛着がある人もいるでしょうが、CMスポンサーの側から見ると、求めているのはタレントさんであって、不祥事を起こしたジャニーズという名前ではありません。悪いイメージを想起させるような名前がついてまわるのは好ましくありません。

逆に言えば、旧来のジャニーズと関係が薄いということであれば、知名度・好感度の高いタレントを従来通りに使いたいという企業は出てくる可能性があると考えられます。いずれにしても、今後の展開に注目です。

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