手を冷やしながら減速、さもないと絶命する

地球に接近し、降下するあいだじゅう、絶対にスピードが上がらないようにすること――そして、必要に応じて、手やブレーキパッドを冷ますために止まるようにしよう。ヤバくなってから減速しようとしてもだめだ。

脱出速度に近づいてきたら、減速しないとだめだということを土壇場で思い出してほしい。さもないと、棒にしがみつこうとしてギョッとすることになるだろう。最善の場合でも、あなたは投げ出され、墜落して絶命するだろう。最悪の場合には、手と棒の表面とが励起した新しい形の物質に変貌し、その後あなたは投げ出され、墜落して絶命するだろう。

猛烈な風が襲ってくる

ゆっくり降下し、制御された形で大気圏に入ったとしても、すぐに次の問題に直面するだろう。滑り棒は、地球と同じ速度では動いていないのだ。近い速度ですらない。下にある陸と大気は、あなたに対して猛烈なスピードで動いているだろう。あなたは、強烈な風のなかに落ちようとしているのだ。

月は、だいたい秒速1キロメートルぐらいの速度で地球の周りを公転しており、29日間で1周している。私たちが考えている架空の滑り棒の上端も、この速度で運動していることになる。棒の下端は、同じ長さの時間に、それよりもっと小さな円を描いて運動しており、その平均速度は、月の軌道の中心に対して時速約35マイル(時速56キロメートル)だ。