労働者の付加価値は、経営者の優劣に左右される

企業が成功を収めるには、経営者によるデザイン(設計)が重要な要素となるともフォードは述べています。どんなサービスを提供し、どんな工程で製造して、どう労働者が働くかは、経営者の設計次第で大きく変わるもので、現場で働く個々の労働者が変化させることができない点が多いからです。

労働者が1日仕事をした結果として、どれほどの付加価値を生み出せるかは、労働者ではなく、経営者のデザイン(会社の設計)に依存しているのです。

企業の規模は経営者のリーダーシップ(経営手腕)の優劣に比例していくのです。

「お金は力ではなく、ただの商品にすぎない」

ヘンリー・フォードは起業家として資本との関係に苦労した経験を多数持ちます。

そのため、お金が企業を支配する、資本がすべてを所有するという考え方に強い否定を表明しています。

「今日では金融トラストがアメリカ人の労働者、つまり手や頭を使って、生産という形で社会に貢献している創造者を支配するということはなくなった」(同書より)

フォードは、お金だけあっても、大衆に良いサービスを提供する大企業は作れないと指摘します。起業家の意思と、優れたデザイン力によってはじめて、多くの大衆に支持を得る大企業が成立できるからです。

ヘンリーフォードをフィーチャーした米国からのスタンプ
写真=iStock.com/traveler1116
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たたき上げの起業家らしく、フォードは企業や人がお金に支配されてはいけないと何度も警鐘を鳴らします。しかし今日でもファイナンスと起業家の関係は難しく、初期に多額の投資を受け入れたベンチャー企業の創業者が、成長の過程で経営権を失うケースなども散見されます。

ただし、お金そのものや法律自体が大企業を生み出すことはなく、起業家のサービスを生み出そうという強い意思が企業を成立させることを考えると、「お金は力ではなく、ただの商品にすぎない」というフォードの言葉には耳を傾ける価値があるでしょう。