最大の不安材料は「多額の社債償還」

3つ目の不安材料は、決算発表における明るい材料と申し上げた前述のOpenAI社との提携です。三木谷氏が言うところの、アルトマン氏が提携相手として楽天を選んだ理由にある「モバイルが持つエッジコンピューティングパワー」、これこそタレック・パワーそのものなのです。

すなわち、アルトマン氏はタレック氏の技術開発力を高く評価して提携を決めたわけであり、それが提携成立のタイミングで肝心のキーマンを失ったわけで、今後想定通りに提携業務が進むのか不安は尽きません。後任のシャラッド・スリオアストーア氏については、三木谷氏も「0から1をつくる」タレック氏とは異なるタイプと認めており、今後のOpenAI社の動向に注視が必要でしょう。

そして4つ目となる現時点での最大の不安材料は、前回の拙稿でも申し上げた多額の社債償還です。今年度が780億円。24年度は3000億円。25年度には4000億円もの償還が待ち受けています。今年度は、5月の3000億円の増資に加えて現在申請中の楽天証券の上場で最大1000億円の調達を予定しており、なんとか乗り切る算段がついている模様です。問題は、24年度以降のさらなる巨額償還をいかに乗り切るかです。

「自信を形にできるのか」が問われる1年に

三木谷社長は楽天カードの株式公開にも含みを持たせてはいるものの、これ以上の子会社上場は将来の利益を先取りしてしまうこと、親子上場には少数株主の利益棄損などの懸念がささやかれていることから、一筋縄ではいかない状況です。増資に関しては、5月の第三者割当増資で34%の株式希薄化により一層の株価下落をもたらしており、モバイルの契約増強などの株価押上げ要因がない限り難しいといえます。

シリコンバレーにある楽天本社
写真=iStock.com/Sundry Photography
※写真はイメージです

また借り換えとなれば、格付機関から軒並み格下げを食らっている状況下では金利が大幅に上昇するため、やはり業績好転による格付再上昇がないと財務の悪化に拍車をかけることになります。そうなるとこのままでは、一部で噂される楽天球団の売却も現実味を帯びてきそうです。

ようやく赤字化のペースが緩み業務提携による巻き返しも感じさせたこの中間決算ですが、以上述べたとおりの不安材料を一掃して、この先1年の間に数字で見える成果を上げていかないことには、明るい展望はまだまだ見えてきません。決算会見で「楽天の経営に絶対の自信を持っている」と発言していた三木谷社長ですが、その自信を形にできるのかが真に問われる1年になりそうです。

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