報じられなかったジャニー氏の性加害疑惑
ジャニーズ事務所の創業者である故・ジャニー喜多川氏が所属タレントに性加害を繰り返していた問題では、『週刊文春』などがが何度も報じていたにもかかわらず、テレビや新聞(一般紙)などのマスコミは黙殺を続けてきた。
その原因としては、マスコミがジャニーズ事務所の所属タレントを多く起用している関係で「マスコミと事務所の癒着によって、忖度があったのではないか?」と指摘されている。
8月29日にジャニーズ事務所が公表した「外部専門家による再発防止特別チーム」による調査報告書でも、「マスメディアの沈黙」という項目が設けられ、以下のように記載された。
「ジャニー氏の性加害を取り上げて報道すると、ジャニーズ事務所のアイドルタレントを自社のテレビ番組等に出演させたり、雑誌に掲載したりできなくなるのではないかといった危惧から、ジャニー氏の性加害を取り上げて報道するのを控えていた状況があったのではないか」
「被害者ヒアリングの中でも、ジャニーズ事務所が日本でトップのエンターテインメント企業であり、ジャニー氏の性加害を取り上げて報道するのを控えざるを得なかっただろうという意見が多く聞かれた」
ただ、マスコミが黙殺してきた問題は、ジャニーズ事務所の性加害だけではない。
問題は「マスコミと事務所の癒着」にとどまらない
例えば、映画監督の園子温氏が女優などに性加害を繰り返していた疑惑については、『週刊女性』が最初に報じ、『週刊文春』なども関連する話題を報じているが、マスコミは沈黙を続けている。
また歌舞伎俳優の市川猿之助氏の一家心中事件は、テレビや新聞のニュースはあくまで警察捜査の経過を伝えることに重きを置いており、事件前に『女性セブン』が報じていた猿之助氏の性加害疑惑は無視されている。
つまり、ジャニーズ事務所の問題に限らず、著名人による性加害問題は見過ごされるケースが非常に多い。
そして、その原因は「マスコミと事務所の癒着」という個別的な問題ではなく、報道業界の構造的な問題ではないかと、私は考えている。
それは一体何なのか。
報道の実態について問い直すとともに、マスコミの限界をどう覆すべきかを考えていきたい。