日本への最大の貢献は優秀なインド人技術者の誘致

――IISJのこれまでの最大の成果、貢献はなんですか。

最大の成果は、インドから多くのIT技術者が日本に来て活躍できるようになったことが挙げられます。IISJができる前は、子供の教育ができないので、若い独身者以外は日本で定住して仕事をするのが困難でした。それが今では、日本でも子供の教育ができるので、家族を持つ経験豊富なエンジニアも日本で腰を据えて仕事ができるようになったのです。

その意味では、IISJは多くのインド人に日本での就労機会を増やしただけでなく、IISJの存在は日本の産業界、経済界に貢献しているとも言えるのではないでしょうか。日本では、IT技術者を増やすことが急務といわれており、IISJの存在意義や成果を日本政府や産業界にもよく知ってほしいと思います。

図書室の様子
撮影=プレジデントオンライン編集部
図書室の様子

インド人にとって日本語とビザの壁は高い

――優秀なインド人が日本に留学し日本で就職するには、日本語の壁が高いと聞いています。

東京大学インド事務所は、インドの若者向けに毎月オンラインで留学説明会を開催しています。以前、東大から、「多くのインド人が米国の大学に留学しているのに、なぜ日本の大学に留学する若者が少ないのか」と聞かれたことがあります。私は「従来の日本の大学は、①難しい日本語の壁、②高い生活費、③不十分なベジタリアン対応、という3つの大きな問題を抱えており、そのために、優秀なインド人学生はなかなか日本には来ないので、それらを解消したら留学生は増えますよ」と答えました。

ただ、最近の日本の大学には、英語で受講できるコースが増えています。だから、IISJの卒業生も日本の大学で学ぶようになりました。日本の大学も徐々に変化しており、インド人には学びやすくなっています。しかし、そのことはインドではほとんど知られていないので、広くインド人に周知する必要があると考えています。

ビザの問題もあります。米国で働くIT技術者などは、その両親も一定の条件の下で米国に住むためのビザがもらえますが、日本ではそうなっていません。多くのインド人の親は子供たちと一緒に住みたいと考えています。だから、能力のあるインド人は日本よりも米国を選ぶ傾向が強いのも事実です。日本が本気で優秀なインド人IT技術者、研究者を呼び込みたいのであれば、解決すべき課題が残っています。