岸田文雄内閣の支持率が低迷している。だが、野党第1党である立憲民主党の支持率も伸びていない。なぜ立憲は世論の受け皿になっていないのか。2017年に立憲を結党し、21年まで代表を務めた衆院議員の枝野幸男氏(59)に、ジャーナリストの尾中香尚里さんが聞いた――。(後編/全2回)
衆院議員の枝野幸男氏
撮影=門間新弥
衆院議員の枝野幸男氏

社会は変わり続けているのに政治が「昭和」のまま

前編から続く

私が政治家として過ごしてきた30年は、平成の30年間とほぼ一致します。この時代は戦後復興から高度成長という「昭和の社会」が変質してしまったのに、政治がそれについて行けず右往左往した時代でした。その状況は現在、さらに深刻になっています。「昭和」を終わらせないといけません。

平成の時代に社会はどう変わったのでしょうか。

まず国内では、人口が急激に増えた時代から、急激な人口減少社会に転換しました。国際的には、急激な気候変動と権威主義の台頭によって、私たちが国際社会の安定に依存することができなくなりました。

自民党も問題は認識していると思いますが、人口減少には人口問題、気候変動には温暖化問題というように、個別の課題ととらえてパッチワークのような対応しかしていません。

自民党は「見たくない現実」から目を背けている

これらに加えてあと2つ指摘したい。ひとつは高度経済成長が終わり、経済が成熟化していること。もうひとつは急速な核家族化と都市化です。これらについては、自民党は問題を自覚していないとしか思えません。「見たくない現実」なのかもしれませんが。

後者の2つについて、もう少し説明させてください。

経済が成熟化したということは「大量生産で大きく稼ぐ」のが困難になった、ということです。大量生産、大量消費を前提に、国際的な価格競争で稼ぐのは、古い「昭和」の途上国型モデルです。

にもかかわらず自民党は、相変わらず重厚長大、大量生産、大企業を中心に国が回ると勘違いしています。だから国内消費のウエートが高まっているにもかかわらず「人件費を下げなければ国際競争に勝てない」といって、労働者の賃金を抑制し、国民の購買力を失わせてきました。

世の中が変化したのに、打ち出す政策がその変化に合っていないから、よりひどい状況になる。だから少子化も加速するのです。

急速な核家族化と都市化についても、自民党は現実を見ようとしていません。

今や家族や親戚、隣近所といった「身近な支え合い」は、やりたくてもできない状態になっています。自民党は「家族が支え合うべきだ」と主張していますが、価値観の善しあし以前に、もはやそんなことは不可能です。

政治家の仕事とは、国民が「見たくない」と目を背けている現実に気づき、対応することです。「見たくない現実」だからといって、社会の変化から目を背けて、いまだに「東京五輪や大阪万博をやれば景気が良くなる」などと発想しているのは、政治家失格なのではないでしょうか。