ちなみに、世界6位(340億5000万米ドル)だった08年9月から、リーマン・ショックをはさんでの09年1月発表までに、約7.3%も下げている。この間はほぼ全業種がブランド価値を減らし、特に自動車・金融・電機の下げ幅が大きかった。影響を免れたのはグーグルなどIT関連ぐらいだという。
「リコール問題の発生は昨秋なので、その分は算出額に反映されていますが、年明け以降の大規模なリコールの影響はまだ反映されていません。現時点で、今年9月発表のランキングで減少する可能性も否定できません」
インターブランドジャパン(以下IBJ)シニア・マーケティング・ディレクターの中村正道氏がそう解説する。
「ただ、我々はそれぞれのブランドが将来にわたってどれくらい利益を稼げるか、という観点から評価している。一時的に販売台数が落ちても、将来利益が変わらなければ、ブランド価値への影響は小さい」(中村氏)
IBJのエグゼクティブ・コンサルタント、田中英富氏によれば、トヨタブランドは、もともと価格や燃費といった複数の「機能」じたいが“ブランド化”しているのが特徴という。
「プリウス投入によって、そこにエコという情緒的なイメージを上乗せし、ここ数年凄い勢いでブランド価値を上げた。“エコ”がスローガンに偏りがちな産業界で、実体を伴った“エコビジネス”として成功を収めた先駆的な事例です」(IBJ田中氏)
トヨタは09年度の連結業績について、売上高を08年度の20兆5295億円から約10%減の18兆5000億円、4610億円の営業赤字幅が200億円に縮小すると見込んでいる。今年3月の米国での新車販売台数は、前年同月比約4割増となった。一見、トヨタブランドは安泰に見えるが、回復が主に値引きによるものだとすると、ブランドではなく価格で売れたことになる。これではブランド価値が「下がっていない」ことにはならない。
「欧州ではリコールの影響がまだ残っている。欧米エリアの販売台数がどう推移するかが、今後のブランド価格を決めると思う」(田中氏)
では、ブランド価値の具体的な算出方法を見ていこう。IBの手法は、ある企業について、
I.将来の経済的利益((1)・図参照)を予測・算出する
II.(1)のうちブランドの貢献分((2))を抽出する
III.(2)を現在価値に直す
の3段階を踏む。まず、(1)の算出(I)はJPモルガン、シティグループ、モルガン・スタンレー各証券会社のアナリストの予測値がベース。日本のランキングでは国内証券アナリストの予測値の平均を使う。
この将来利益にブランドが貢献する割合を乗じて貢献分((2))を抽出する(II)のだが、その割合は業種によって異なるし、同業でもメーカーや商品ブランドによって違う。そこで、過去20年のデータベースを基に、業界別でベンチマーク分析を行い、貢献の度合いを見出す。
「自動車メーカーの(1)に占めるブランド貢献分は平均で約5割。ステータス化した高級車ブランドで5割超。高級スポーツカーブランドとなると7~8割、逆に大衆車は3~4割」(田中氏)