“意図した評判づくり”への意識

ちなみに、香水は将来利益の9割近くがブランド貢献分という。ビールも約8割超とかなり高い。安心・安全が重視される食品は約7割、家電製品は5割。店舗網や利回りがモノをいう金融は意外に低く4割。効果・効能が重視される医薬品は2割。工業材は1割程度という。

こうして出した将来の5~10年分の(2)とその後の永続価値を独自に設定した割引率により現在価値に直す(III)。その割引率を出すには、まず各ブランドを次の7項目で評価する。

a)主導性(高シェアかどうか)
b)展開性(国際的なブランドか)

の2点を各25点満点で、

c)安定性(歴史があるか)
を15点満点で、

d)市場性(参入障壁は高いか)
e)方向性(売り上げの伸び)
f)サポート性(ブランド育成の水準)

の3点を各10点満点で、

g)保護性(法的保護の有無)
を5点満点で採点し、

計100点満点の点数によって割引率を決める。その際、業界平均を50点とし、その場合の割引率を全業種で8%とする(実際は業種により様々だが、ランキング作成の際は扱う企業数が膨大なため一律に設定)。7項目で50点以上なら割引率は8%以下だが、50点未満なら8%超が引かれる。

「abcの3項目だけで65点を占め、そのどれかに傷が付くと価値が大きく下がる。トヨタの場合、今回はaのシェアが失われ、cの安定性に傷が付いた可能性がある。bについては、いずれかの国の市場から締め出されるような事態は考えにくいので大丈夫ですが」(田中氏)

意外に? 緻密に算出されていることがわかったが“いいものさえつくっていれば売れる”と考えがちな日本の企業に、ブランド戦略という“意図した評判づくり”への意識はまだ薄い。
「ブランドづくりにはコミュニケーション活動が重要。いいものをつくっても、顧客にそれを伝える努力をしなければ」(同)

トヨタがブランド価値を落としたら、“いいものさえ……”というマインドがさらに強まるのでは……IBJの田中氏はそう懸念しているという。

(PANA=写真)