断たれた絆“比率”が落とし穴に

今年2月、食品業界トップのキリンホールディングスと第2位のサントリーホールディングスの経営統合交渉が破談となった。キリンもサントリーも厳しい経営環境の中で数少ない勝ち組。もし経営統合が実現していれば売上高3兆8000億円、世界上位クラスの食品メジャーが日本でも誕生することになっていただけに、周囲からは惜しむ声が聞こえる。

キリンの加藤壹康(かずやす)社長(当時)は2月8日午後都内で行われた会見で、「両社の認識が一致せず、上場会社として独立性、透明性を担保できない」ことなど破談に至った理由を説明。サントリーの佐治信忠社長もまた「最終的な統合比率で合意にいたらなかったため、統合交渉を終了した」とのコメントを発表した。なぜ、経済界からも歓迎する声が多かった両社の経営統合は失敗してしまったのか。

M&Aに詳しいGCAサヴィアングループ取締役の佐山展生氏は一般論であるという前提で次のように語る。

「M&Aというのは秘密裏に行われますから当事者でないと真実はわかりませんが、一般的に勝ち組同士の経営統合というのは一緒になり強い会社をつくろうということには利益相反がなく合意するのです。ただ、具体的にどのように統合しようかという段階になって、両社の利害が対立することになります。だから私は経営統合の際には、経営者の方に4つの合意ポイントを指摘しています。特に勝ち組同士の経営統合ではこの点が重要です」

勝ち組同士の経営統合を円滑にまとめるための4つのポイントとは、(1)誰が社長になるか、(2)本社はどこか、(3)会社の名前はどうするか、(4)統合比率はどうするか――ということだ。

この4つの点についての骨格、言葉を換えれば前提条件が両社のトップ間で合意しない限り、経営統合を検討していることさえ公表してはいけないという。