有利子負債を4年後にゼロへ

ソフトバンクが相変わらず好調だ。2010年3月期の連結売上高は前期比3.4%増の2兆7634億円、営業利益は29.7%増の4658億円を達成。NTTドコモ(以下ドコモ)とKDDIが減収となる中、携帯電話大手3社中で唯一、増収増益をキープしている格好だ。

ソフトバンクといえば、相次いで大型買収を行い、借金まみれという印象が強かったが、純有利子負債においても前年同期に比べて大幅に削減。14年にはゼロにする目標を掲げ、実質無借金経営を実現させると公言している。

ソフトバンクの携帯電話事業が好調なのは、やはり「0円戦略」(フリーミアム戦略)が効果的に作用している点が大きい。月額980円のホワイトプランによる「通話無料」を筆頭に、最近では学生向けプランとして、ドコモやauがどんなに頑張っても390円まで値下げしていない中、基本料金も3年間無料という「ホワイト学割」キャンペーンを展開している。

また、学生以外においても、他社から乗り換え、さらに友人や家族など複数同時に新規加入することで、最大15カ月間、基本料金が無料になるキャンペーンも行っている。

さらに、好調の起爆剤となっているiPhoneの販売においても、16GBモデルを一部の料金プランで契約すれば実質0円で本体を購入できるようにもなっているのだ。

ソフトバンクモバイル(以下、ソフトバンク)が賢いのは、0円という安価な価格設定で消費者を引き寄せつつ、着実にユーザーを優良顧客にしてしまう点にある。同社の「0円戦略」のカラクリを見ていこう。

まず、最大15カ月間基本料金が無料になるキャンペーンの場合、単に友人や家族と一緒に入っただけでは5カ月しか無料にならない。他社からMNPなどで移行してくればさらに5カ月、また新規加入の翌々月から最初の3カ月間の請求額の平均が1万円を超えた場合にもう5カ月間、無料期間が延長されるというものなのだ。

iPhoneの「実質0円」戦略はどうか。この場合も、0円で購入するためには毎月のパケット通信料金が4410円に固定されるという制限が加わる。

かつて、ソフトバンクは0円に近い端末を大量にばらまき、契約者数確保に走っていたことがあるが、いまでは、他社から優良顧客を奪い、通信料金を稼ぐことに成功しつつある。

学生向けに展開する「ホワイト学割」でも、基本料を無料とする一方で「コンテンツ学割クラブ」と称して音楽やゲーム、電子書籍、動画などのコンテンツを用意している。情報料は「無料」だが、別途通信料が必要なので、動画を数本もダウンロードすればたちまち上限である4410円に到達してしまうようになる。通信料でがっちりと稼げるようになっているのだ。

実際、07年度第4四半期のデータARPU(1契約当たりの通信料収入)は1600円だったが、09年度第4四半期には2140円までに上昇している。

今後、ますますiPhoneなどのスマートフォンユーザーが増えれば、データの通信料収入はさらに増加することが期待できる。いち早く、スマートフォンに舵取りをしたソフトバンクだからこそ、実現できた収益構造といえるだろう。