「男らしさ」がDV被害を受けた男性を追いつめている
DVも、「夫が加害者で妻が被害者」という世間の思い込み、先入観がある深刻な問題のひとつである。夫婦間のDV被害経験者の性別では男性も一定割合いて、女性に比べて男性はDVを受けても相談しない傾向にある。
内閣府が3年ごとに実施している「男女間における暴力に関する調査」の2020年度調査によると、これまでに配偶者からDV被害に遭った経験のある人の割合は、女性が25.9%、男性が18.4%だった。被害経験者に誰かに打ち明けたり、相談したりしたかを尋ねたところ、「相談した」が女性は53.7%と過半数を占めたのに対し、男性は女性よりも20ポイント以上低い31.5%にとどまった(図表1)。
もともと他者に弱みを見せられず、男性は女性よりも強くあるべきという旧来の性規範に縛られているがゆえに、被害を相談しにくい傾向にあると考えられる。
都道府県の婦人相談所などが設置する、DV被害者の一時保護施設、いわゆる「シェルター」は大半が保護対象を女性に限定している。男性のDV被害者については公的支援が行き届いていないのが実情で、妻に居場所を知られないようにするため、インターネットカフェで過ごしたり、自家用車で車中泊したりするしかない男性被害者もいる。