「日本が無条件降伏した」は誤りである

日本の歴史教科書で、もう改めたほうがいいと思うものに「ポツダム宣言」という呼称がある。これは「日本の降伏条件を定めた公告」に改めるべきだ。事実、日本はこれを受諾することによって戦争終結を連合国に求めている。したがって、NHKはいまだに改めずにいるが、「日本が無条件降伏した」というのは誤りだ。

このことは、公告の第5条に「われわれの(降伏)条件は次のものである」とあり、そのあとに降伏条件が述べられていることからも否定のしようがない。第13条にもあるように、無条件降伏を求めているのは日本軍に対してであって日本でもなければ日本国民でもない。軍隊が降伏するとき、無条件降伏は当たり前だ。

玉音放送を聞く日本の民間人たち
玉音放送を聞く日本の人たち(写真=撮影者不詳/PD-Japan-oldphoto/Wikimedia Commons

公告を無条件に受諾したのだという人もいるがこれも誤りで、日本は「バーンズ回答」(日本側が「この公告は天皇の国家統治の大権の変更を含まないものと理解する」と降伏受諾に付帯条件を付けたのに対し「降伏と同時に天皇の国家統治の大権は連合国軍最高司令官の下に置かれる」とアメリカの国務長官ジェイムズ・バーンズが答えたもの)さえ呑んでいない。

ソ連は「日本の降伏条件を定めた公告」に不同意

あくまでも、降伏したのちも日本の国の形は変えない、皇室は維持される(国体護持)という条件のもとに降伏している。だから、欧米の国民の間では「ヒロヒト」を罰すべしという世論が圧倒的に強かったにもかかわらず、戦犯にされるどころか、裁判にかけられることさえなかった。

しかし戦争が終わり、占領が始まると、占領軍はNHK(当時唯一ラジオ放送していた)や新聞などを使って「日本は無条件降伏した」というプロパガンダを流した。(以上、詳しくは拙著『日本人はなぜ自虐的になったのか』新潮新書 参照)そう日本人に思い込ませたほうが占領をやりやすかったからだ。だから「日本の降伏条件を定めた公告」ではまずかったのだ。

ソ連に関して問題なのは、この公告に、英米首脳の署名はあるが、ソ連と中国のものはないことだ。中国首脳の場合は、事前に同意を伝えていたので問題ない。だが、スターリンの場合は「日本の降伏条件を定めた公告」に同意していない。この点はこれまでほとんど注意を向けられてこなかったが、このあとのソ連の振る舞いを決めた決定的要因だった。